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臨床試験中のワクチンが日の目を見ることはあるか!?アークトゥルス(Arcturus Therapeutics)銘柄分析!


(出典:CNBC)

今回はTwitter上でリクエストを頂いた、バイオテクノロジー企業のアークトゥルス(NASDAQ: ARCT)を紹介します。(プロのアナリストでは無いですが、英語力を活かして全力で銘柄分析をしますので、調べて欲しい銘柄のリクエストがあれば大歓迎です、問い合わせTwitterからお気軽にご連絡下さい!)

以前もモデルナ等のワクチン関連銘柄を紹介しましたが、ワクチンに限らずヘルスケア関連銘柄はディフェンシブ株と言われるので、是非ポートフォリオに加えて相場の動きにも揺さぶられない安定性を取り入れたいところです。

では、決算書の内容について私が調べた内容を皆様に共有したいと思います!

 

アークトゥルスの企業概要、事業内容(単純事業)

先ず社名について、アークトゥルス年次報告書より、インターネット上では「アルコブラ」と書いてあるものもありますが、正しくは「アークトゥルス」です。「アルコブラ」はイスラエルの会社ですが、2017年に「アークトゥルス」に合併されて社名が消えています。因みに、「アークトゥルス」は最初からカリフォルニアに本社があるアメリカの企業です。

さて、アークトゥルスは臨床段階のRNA(リボ核酸)技術を用いた医薬品の先導的企業です。まさにコロナワクチンの為の企業と言えます。創業は2013年、ナスダックに上場したのは2019年です。

恐らく日本では全く知られていませんが、アークトゥルスはワクチンの供給契約を締結しています。2020年にイスラエル健康庁と、ARCT-021というワクチンの50万本供給を締結しました。

アークトゥルスはRNA技術を用いた医薬品の開発以外は事業を行っていません。事業内容はシンプルで、投資家にとって事業多角化のリスクが少ない銘柄だと言えます。

 

コロナワクチンの市場規模(社会需要)


(出典:Statista)

RNA技術を用いた治療薬と言えば代表的なものはコロナワクチンなので、その需要を見てみましょう。上記は各ワクチンメーカーの売上予想です。2021年、まさに今年は供給が多いですが、2022年には売上が減る予想です。今すぐワクチンを打たなければいけないという需要は突発的で、来年以降は需要が落ち着く予想です。上記データよりは、ワクチンの需要は長くは続かないということが分かります。

 

製薬の業界構造(競争要因、参入障壁)

製薬業界について5フォース分析をしてみましょう。


(出典:DW

先ず直接の競合は他の製薬会社でしょう。アークトゥルスが現在取り組んでいるのはワクチンだけなので、ワクチンメーカーを調べました。上記はワクチンメーカートップ7になります。2020~2021年の期間で契約しているワクチンの本数はアストラゼネカが1位、ノババックスが2位です。コロナワクチンに絞っても複数の製薬会社があるので、需要が大きいとは言え、企業の数は多い印象です。従って、競合間の競争は激しいと言えます。

次は顧客との力関係です。アークトゥルスの契約実績は国や官公庁になっているので、顧客は彼らになります。既述の通りワクチンメーカーは複数あるので、国にとってみればアークトゥルスは複数あるメーカーの1つに過ぎません。従って、アークトゥルスの顧客に対する交渉力は強くないと言えます。

仕入先との力関係はどうでしょうか。アークトゥルスは自身で製造を行っていないので、ここで仕入れ先は製造を委託している協業メーカーとしましょう。コロナワクチンの製造技術に関する詳細を把握していませんが、ご存知の通りコロナワクチンは日本で製造できていません。その事実から、ワクチンの製造が簡単で無いことは推測できます。世界がコロナで混沌としている状況下、協業してくれるメーカーが探しやすいタイミングではありますが、かといってアークトゥルスが複数の候補からパートナーを選ぶことができる状況でも無さそうです。つまり、仕入先(協業メーカー)に対するアークトゥルスの交渉力は並程度と言えるでしょう。

代替商品の脅威について、コロナに感染する以外(感染したら免疫が出来るんでしたっけ?)、ワクチンの代替案は無さそうです。現時点では代替商品の脅威は無さそうです。

新規参入者について、統計的なデータを入手するのが難しいですが、コロナワクチンの開発でこれ以上新規参入した企業がいるというのはあまり聞きません。日本が国産ワクチンを目指しているくらいでしょうか。コロナワクチンに限定すれば新規参入は少ないと言えそうです。又、製薬業界の参入障壁について、医薬品開発には莫大な開発費用が掛かりますし、研究設備も必要で、おまけに自前で製造するとなると設備投資まで必要です。医療・化学に関する高度な知識を有する人材も必要になります。人、モノ、金が必要で、他の業界と比較すると参入障壁はかなり高いと言えます。

 

アークトゥルスの強み(商品力)

アークトゥルス年次報告書より、アークトゥルスの強みはRNAに特化した技術力です。

アークトゥルスはLUNAR、STARRという2つの技術を持っています。LUNARは脂質仲介送達システムのことで、STARRは自己複製RNAとLUNARを組み合わせる技術のことです。

アークトゥルスが有する2つの技術により、従来のコロナワクチンよりも服用量(1回のワクチンの量)を少なくすることが出来る利点があります。同じ医薬品の量でも、より多くの方にワクチン接種を行えるので、その可能性に世界が注目しているのです。

 

アークトゥルスの株価(割安度)


(出典:yahoo!finance)

上記はアークトゥルスの株価チャート(青色)です。2020年に株価が上昇して一度はS&P 500(赤色)を上回りましたが、結局株価は高値を維持出来ずに下落して、2021年8月15日の株価は48.02ドルです。


(出典:Yahoo!ファイナンス)

上記はアークトゥルスの各株価指標です。

まずPER(株価収益率)を見てみましょう。PERの数値が無く「ーー」と記載されていますが、これはマイナスを意味します。株式市場で株価がついているけど、純利益は出ていない(マイナス)ので、今日時点では割高、企業の実力よりも株価の方が高いということになります。

次にPBR(株価純資産倍率)を見ます。アークトゥルスのPBR、上記の数値が高いか低いかを判断するために、セクターの平均と比較しましょう。バイオテクノロジー企業はS&P 500のHealthcare(ヘルスケア)セクターで、そのセクターのPBR=3.49(参照:gurufocus)です。アークトゥルスのPBRの方がずっと高いので、割高だと言えます。

 

アークトゥルスの配当金(配当)

アークトゥルスは無配当です。年次報告書より、収益は全て企業の事業活動や資金繰りに回すと記載があります。

無配当=お金が無いというわけでは無いので、ちゃんと収益が出ているかは財務諸表を見て判断しましょう。

 

アークトゥルスの決算内容

アークトゥルスの決算内容を一言で表すと、「ワクチン供給が少なかったので運動成績(純損失)がボロボロ、肝心の本業で大怪我して大量出血(営業キャッシュフローのマイナス)するも、新株発行で投資家から大量輸血してもらい(財務キャッシュフローのプラス)で一命を取り留める」という感じです。

下記(3つのポイントの後)に財務諸表があるので、詳細を確認されたい方はそちらをご覧ください。

 

ポイント1

先ず注目すべきは損益計算書(Consolidated statements of operation)の営業損失(Loss from Operation)です。アークトゥルスはワクチンを自社で製造してバンバン発売しているわけでは無いので、売上(Collaboration revenue)が小さいのですが、それに対し営業経費(Operating expenses)、特に研究開発費(Research and Development Expenses)が大きすぎて利益が残っていません。

年次報告書より、この状況は暫く続くということで、協業による売上ががっつり入ってくる見込みが無く、赤字は暫く続くということです。

 

ポイント2

次に注目すべきは賃借対照表(Consolidated Balance Sheets)の資本余剰金(Additional Paid-in Capital)です。新株発行により、大量の資金を獲得して資産総額(Total assets)が大きく増加しています。

現状、赤字で現金がどんどん減っていく一方なので、追加で資金獲得できて一安心です。

 

ポイント3

キャッシュフロー計算書(Consolidated Statements of cashflows)では財務キャッシュフロー(Net cash provided by Financing Activities)が大きなプラスで目立ちます。新株発行で多くのキャッシュが入ってきていることが分かります。

 

財務諸表


(出典:アークトゥルス年次報告書

 

アークトゥルスは今後大きくなるか?(成長性)

アークトゥルスの成長性を評価していきましょう。

先ず損益計算書より、2020年は減収減益の赤字です。2019年で打ち切られた共同開発契約や、前期1回きりの契約があった為、2020年は売上(Collaboration revenue)が減少しています。

次に最新業績ですが、アークトゥルス2021年第2四半期報告より、最新業績は売上が前期比減の2,000万ドル、純損失は5,460万ドルでした。未だ黒字化する見込みは立っていないようです。

次に年次報告書の賃借対照表より、資産総額(Total assets)の増加度合いを見ますが、2020年で大幅に金額が上がっています。これは新株発行による追加資金の獲得です。事業活動によりお金が蓄えられて企業スケールが大きくなったわけでは無いので、企業が順調に成長したという内容ではありません。

上記を纏めると、アークトゥルスは未だ成長フェーズに入っていないと言えます。

 

アークトゥルスは儲かっているか?(収益性)

アークトゥルスの収益性をチェックしていきましょう。

先ず売上高純利益率ですが、アークトゥルスは赤字なので利益率はマイナスです。

次にROA(総資産利益率)ですが、赤字なのでこの数値もマイナスです。

ROE(自己資本利益率)=純利益÷純資産もマイナスです。

上記より、アークトゥルスはそもそも収益を出せていないと言えます。

 

アークトゥルスは倒産しないか?(安全性)

最後にアークトゥルスの安全性をチェックしましょう。

賃借対照表より、短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率=流動資産÷流動負債=944%で、先ず問題無いです。

自己資本比率=純資産÷資産総額=83%と、理想の50%を上回っており、安全性は抜群です。

次にキャッシュフロー計算書(Consolidated Statement of Cash Flows)から見る安全性ですが、2020年は一番大事な営業キャッシュフロー(Net Cash Used in Operating Activities)がマイナス、つまり本業で現金が出ていっている状況です。投資キャッシュフロー(Net Cash Provided by Investing Activities)は小さなマイナスで、設備投資等に少しお金を使っています。財務キャッシュフロー(Net Cash Provided by Financing Activities)は大きなプラスで、新株発行で大量のお金を調達しています。本業でキャッシュが稼げていないので、資金繰りは悪いですね。

上記を纏めると、アークトゥルスの安全性は普通と言ったところです。

 

アークトゥルスの総評

以下は私個人が行った銘柄評価で、特定の企業や従業員、株主を攻撃する目的はありません。又、各銘柄について絶対的に正しい評価を議論するものでも無い為、私個人の銘柄評価に対する非難や誹謗中傷、嫌がらせはお止め下さい。

さて、しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、アークトゥルスの総合評価は47点です。年次報告書に書いてありますが、暫くは赤字が続く予想で、協業による収入の大幅な増加も期待できそうにありません。

アークトゥルスは研究開発の会社と理解すると考え方が変わりますが、コロナワクチンの需要増加が期待できないなか、下手をしたらアークトゥルスのワクチンが世の中にデビューする頃には、ワクチン需要は無くなっているかもしれません。

上記を踏まえ、アークトゥルスに投資すべきかどうか、私は絶対に「投資しない」という判断です。RNA技術の新しい応用に期待したいところですね。

以上、アークトゥルスの決算書解説でした。

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