(出典:AZO CLEANTECH)
今回で再生可能エネルギー関連銘柄について一区切りとしたいと思います。
最後に紹介するのは、アジュール・パワー・グローバル(NYSE: AZRE)です。またまた私が知らない銘柄ですが、こちらも再生可能エネルギー関連で注目されているそうです。
では企業、業界、株価指標、業績、財務等、しっかり銘柄分析をしていきましょう!
目次
アジュール・パワーの企業概要、事業内容(単純事業)
公式HPによるとアジュール・パワーはインドの企業で、ニューデリーに拠点を構えます。因みに、拠点はニューデリーですが、ニューヨーク証券取引所の株としてドルで購入できます。
さて、アジュール・パワーは2008年から太陽光発電事業を開始している、歴史が浅い比較的新しい会社です。しかしながら、2009年にはインド初となるメガソーラーを建設しており、インドにおける太陽光の先駆け的存在を確立しています。そして、凄まじいスピードで成長を続け、事業を開始してから僅か8年の2016年、インド企業としては初のニューヨーク証券取引所上場を果たします。アジュール・パワーは初の記録を立てまくる、真のパイオニア企業というわけです。
事業内容について、保有している発電設備は全て太陽光発電で、7GW超の容量であり、実際に稼働しているのは2GWで、他は建設中です。アジュール・パワーは発電設備を有しているだけでは無く、実際に発電設備の建設、機器調達、資金調達、運用、保守全てを自社で行っている積極的な企業です。
アジュール・パワーの強み(商品力)
年次報告書によると、アジュール・パワーの強みは地域に特化した専門性、地域との関係構築力、与信の高い顧客ベース、高い契約履行キャパシティ、電力供給実績、価格競争力等です。
歴史が浅くとも、インドにおいて太陽光発電事業のプロジェクトを一つずつ手掛けて、確実に経験と実力を身に付けていることが分かります。
アジュール・パワーの業界構造(競争要因、参入障壁)
アジュール・パワーについて5フォース分析をしてみましょう。先ず直接の競合は、他の太陽光発電事業者になります。年次報告書によると、インド国内で競合はReNew Power、Tata Power Solar Systems、Adani Green Energy、ACME Cleantech Solutionsです。インド国内に限定しても意外に多いですね。
(出典:SAUR ENERGY)
上記はインドの発電事業者トップ5です。残念ながらアジュール・パワーは入っていませんが、再生可能エネルギーのMW数は上記のトップ5よりアジュール・パワーの方が上です。太陽光発電に関して言えばアジュール・パワーはインド国内でトップクラスと言えそうです。
次は顧客との力関係です。アジュール・パワーが電力を販売しているのは国や工場等の工業施設、エンドユーザーです。一般に電力会社を顧客は選べないので、暴利を貪ることはできませんが、顧客から電力会社に対する値下げの圧力はそこまで高くは無いでしょう。
仕入先との力関係はどうでしょうか。先ずアジュール・パワーはソーラーパネルやインバーター等を複数のメーカーから仕入れてます。以前当ブログで紹介したABBからもインバーターを仕入れているそうです。
【関連情報】エイ・ビー・ビー(ABB)の決算情報(ポイントを絞って分かりやすく解説)
アジュール・パワーは複数あるメーカーから、価格のみならず信頼性、保証のカバー、設置工事の容易さ等を総合的に評価して厳選しているそうです。従って、仕入れ先に対する交渉力は強そうですね。
代替サービスの脅威について、電気に変わるエネルギー源は今日では無いので、電気が別の何かにとって替わられる可能性は低そうです。自家発電の可能性はありますが、初期費用が嵩むことから、太陽光発電を個人(企業でも)で買ったりするのは簡単ではありません。
新規参入者について、太陽光発電建設の請負自体は、設備や労働力、経験が無くても誰でも出来るので、参入障壁は低そうです。しかしアジュール・パワーのように自前で技術者を抱えてプロジェクトを計画したり、自社で直接調達を行ったり、電力供給を継続して行える運用会社はそこまで多くありません。手間が掛かりますし、電力の販売価格が決まっていてそこまで大儲けできる商売でも無さそうなので、今後新参者が出てくると言っても、その数はある程度限定されるでしょう。
太陽光発電の市場規模(社会需要)
(出典:CleanTechnica)
上記はインドの太陽光発電量(GW単位)です。
発電量がそのまま消費量を意味するわけでは無いことには注意が必要ですが、2015年から太陽光発電量は増加傾向です。今後も発電量がどんどん増えて、社会において太陽光の消費量もどんどん増えていく傾向はぼぼ間違い無いでしょう。
アジュール・パワーの株価
(出典:YAHOO!ファイナンス)
アジュール・パワーの株価はずっと低迷していましたが、2020年に爆発的に上昇したもののピークを打った後すぐに下落、元の水準に戻り、また少し上昇して現在に至ります。
チャートだけ見ると、比較的買いやすい株価だと言えます。
アジュール・パワーの株価指標(割安度)
(出典:Reuters)
アジュール・パワーの各株価指標ですが、まずPER(株価収益率)を見てみましょう。アジュール・パワーは2020年が赤字だったのでPERの数値がありません。なのでPERだけ見れば現在の株価は割高ということになります。
次にPBR(純資産倍率)を見ます。太陽光発電はS&P 500で言うUtilitiesセクターなので、こちらと比較します。gurufocusによると平均のPBRは2.35で、これと比較してもアジュール・パワーは割高です。
上記より、アジュール・パワーは割高な水準だと言えるでしょう。
アジュール・パワーの配当金(配当)
アジュール・パワーは無配当です。お金が無いからでは無く、アジュール・パワーのポリシーによるものですね。
年次報告書を読んだ限りでは、今後も配当は出さないようです。
アジュール・パワーの業績(成長性、収益性)
(出典:アジュール・パワーの年次報告書)
上記より、2020年は増収減益の赤字となりました。売上が大きくなったのは、2020年に複数のプロジェクトが運用開始された為です。営業利益は売上に比例して大きくなっています。赤字になった原因は営業外費用、支払利息が営業外費用のほぼ全体を占めていました。新しいプロジェクトに関連する借入金の支払利息が主なものだそうです。調べてみましたが、インドの貸付金利は10%弱なので、南米程では無いですが、世界的に見てもそこそこ金利が高いようです(参照:the Global Economy)。これらを纏めますと、売上や営業利益が伸びているので企業は成長して良い傾向ですが、今期は利息が原因で赤字に転落した、と言えます。
さて、売上高純利益率については、御覧の通りアジュール・パワーは今期は赤字で純利益がマイナスになってます。CSI Marketによると、再生可能エネルギーサービス業界の利益率は1~8%なので、アジュール・パワーは平均よりは悪いということになります。
(出典:Reuters)
2021年の業績予想について(アジュールパワーは日本と同じ3月決算なので、上記の2022とは、2022年3月期決算の意味です。ここでは2022年3月期を2021年とします)、上記より売上は前期と同じ2億ドル、EPS(一株当たり利益)が0.065ドルの予想です。公式HPには詳細情報が無さそうですが、既述の支払利息は一時的なものなのか、2021年は黒字回復を予想しています。
アジュール・パワーの賃借対照表(成長性、収益性、安全性)
(出典:アジュール・パワーの年次報告書)
アジュール・パワーの資産状況について、先ず中身を見ていきます。固定資産が大きくて目立ちますが、その中でも一番大きいのは土地、工場及び機器です。この点は他の電力会社と同じですね。次に大きいのが固定負債で、この中でも一番大きいのが長期借入金です。以上より、土地や設備等の大部分は長期借入金によるものだということが分かります。
では前期比での資産増減を見ましょう。大きく増加しているのは固定資産(土地や設備)、固定負債(長期借入金)ですね。つまり、収益(利益余剰金)の増加による資産の増加では無く、企業が成長したとは言えません。借入で土地や設備を購入したので、今後、その投資によって収益が伸びることを期待したいです。
次にROA(総資産利益率)をチェックすると、今期は赤字なのでROAはマイナスですね。CSI Marketによると業界平均は0.6~0.7%なので、アジュール・パワーは平均以下と言えます。因みに、ROE(自己資本利益率)も赤字なのでマイナスです。
流動資産÷流動負債=流動比率は224%で、100%を遥かに上回っており、短期の支払い能力は全く問題ありません。
自己資本比率は20%と、下限の30%を下回っており、少し危険ゾーンです。
アジュール・パワーのキャッシュフロー計算書(安全性)
(出典:アジュール・パワーの年次報告書)
アジュール・パワーのキャッシュフローは、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローが大きなマイナス、財務キャッシュフローが大きなプラスです。
それぞれ中身を見ていきましょう。営業キャッシュフローについて、今期は赤字でしたが、特に減価償却費が大きかったので、最終的に本業で入ってきているキャッシュはプラスになっています。
投資キャッシュフローについては、既述の通り土地や設備等の購入により大きなマイナスになっています。
財務キャッシュフローですが、長期借入金の返済を行なっているものの、グリーンボンド(再生可能エネルギーに特化した資金調達の為の債券)等の発行により追加借入を行っており、最終的には大きなプラスになっています。
各キャッシュフローを総合すると、本業でキャッシュが入ってきているものの、投資で使い過ぎており、借入を行なっている状態で、未だ深刻な問題では無いですが、これが続くと負債がかなり膨らんでしまうので好ましくありません。
アジュール・パワーの総評
私個人の銘柄評価基準に照らし合わせた、アジュール・パワーの総合評価は64点です。
インドにおいて太陽光発電で不動の地位を確立していますが、負債が大きいので安全性がやや気になります。今後の支払利息が小さくなるかどうかも心配です。株価も安くは無いですね。
アジュール・パワーに投資すべきかどうか、割高なので今は「買わない」というのが私個人の判断です。
以上、アジュール・パワーの決算情報でした。
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