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航空機需要低迷でボーイングの株は今が買いか?BAの銘柄分析


(出典:FINANCIAL TIMES

さて、今回からテーマを変えて「航空機・防衛」関連の銘柄を紹介したいと思います。

防衛は兎も角、コロナで旅行需要が減って、航空機製造は相当なダメージを受けた筈です。にも関わらず航空機・防衛関連に注目した理由は、やはりアメリカを代表する産業だからです。S&P 500というアメリカ大企業500の中にも、航空機・防衛関連の銘柄が複数ありますし、アメリカの輸出品目としてもトップに入るのが航空機・防衛機器です。

もしかしたらコロナで株が大暴落して、お買い得な株がゴロゴロ転がっているかもしれません、先入観を持たずに銘柄を探していきたいと思います。

今回取り上げる銘柄はボーイング(NYSE: BA)です。説明不要かもしれませんね、世界中の航空機を製造しているメーカーです。その実力はどんなもんでしょうか?

ではさっそくいってみましょう!  

 

ボーイングの企業概要、事業内容

 
(出典:Boeing

ボーイングの歴史が始まったのは1910年頃です。上記が初めて製造された航空機、ボーイング モデル1です。

今日、ボーイングが製造しているのは、我々が1度は乗ったことがある旅客航空機、軍用航空機、あとは宇宙船です。主力事業は当然旅客航空機です(但し旅客機の売上が落ち込んで、2020年は軍用機の売上の方が大きいです)。宇宙船も含めて、空飛ぶモノだけを作っているので、事業内容はシンプルですし投資家にも理解し易いですね。

 

航空機製造の外部環境(外部環境)

ボーイングに関する深い分析の前に、航空機機械を取り巻く外部環境をざっくり分析します。

いくらボーイングが優秀な企業でも、航空機業界が厳しい外部環境に曝されていると、今後の成長が難しくなってしまうからです。

政治:空港近くの地域において騒音の削減を求める傾向が強まる
経済:コロナにより旅行や出張が激減、航空会社は大打撃
社会:休暇の過ごし方は海外旅行が多かったが、コロナで激減
技術:SAF(代替燃料)、水素燃料、構造モニタリング等

上記を纏めると、コロナや脱炭素に関連する脅威が強く、航空機業界を取り巻く外部環境は非常に厳しいです。先ずは旅行者等の需要が早く回復して欲しいところです。

 

航空機の需要(市場)


(出典:sherpa REPORT

上記は世界の航空機販売台数です。

2010年からほぼ一定レベルです。2020年のデータ、2020年はコロナの割には売上は殆ど落ちていません。航空機は製造に時間が掛かるので、2020年の受注は激減している筈ですが、2020年の売上は過去に受注した分でしょう。

航空会社各社でお金が無くなっているので、航空機を注文出来ず、直近では市場規模が激減している筈で、回復の見込みも予想が難しいです。

 

航空機の業界構造(業界構造)

航空機業界について5フォース分析をしてみましょう。

大型旅客機を作っているのは、ボーイングの他にエアバス等を含めた4社だけです。他の機械や業界等と比べると、企業の数は圧倒的に少ないですね。

顧客との力関係ですが、あくまで予想ですがボーイングの交渉力はかなり強いでしょう。ちょっと前にボーイング787がデビューした時は、航空会社各社が挙って採用しましたね。他に選択肢があまり無いのもありますし、「買いたいなら売ってあげるよ」というスタンスではないでしょうか。

仕入先との力関係ですが、タービンや航空機内部の装置、部品等、ボーイングが調達する物品の数は膨大です。ボーイングは調達先に依存しているケースがあり、ボーイングが調達先をコロコロ変えるというよりは、調達先と協力関係を築いて航空機を製造するというイメージのようです。

代替品の脅威ですが、ヘリコプター、最近ではドローン、空飛ぶ車等、幾つか選択肢はあります。只、超長距離を短時間で大人数を輸送できるのは、現在の科学技術ではジェット旅客機だけです。

新規参入について、ジェット旅客機を作っているメーカーは何れも20年以上と歴史が古い企業ばかりです。ホンダジェットのように小型機なら参入の難易度も下がりますが、大型機ですと製造設備も超大規模になるので、後から参入してもシェアを獲得できる確実な算段が無ければ、高額な設備投資ができないでしょう。

上記を纏めると、航空機業界の競争はさほど激しく無さそうです。現在の航空機業界の課題は、お客さんの経営危機でしょう。航空機を買ってくれるお客さんは、基本的には航空会社と貨物運送会社だけです、他の業界のお客さんを探しようがありません。他にお客さんがいない、お客さんはお金が無いという、航空機業界は袋小路に追いやられているのです。  

 

競合の強さと市場シェア(競合)


(出典:statista

上記は航空機部品も含めた、航空機トップメーカーの売上ランキングです。

大型旅客機で最大のライバルはエアバスでしょう。エアバスとボーイングの事業は完全に一致していないので、大型旅客機でどちらのシェアが上かは一概に言えないのですが、企業の売上は僅かにエアバスが上です。

大型旅客機の納入台数はずっとボーイングが上でしたが、2000年以降はエアバスがかなり納入台数を伸ばしており、現在はほぼ互角の状況です。

ボーイングが市場を独占しているのに変わりはありませんが、強力なライバルがいるので、余談は許されない状況です。

 

経営資源の強さ(経営資源)


(出典:AirlineRatings

ボーイングの経営資源が優れているのか、ざっくり分析してみましょう。

人的資本:従業員数14万人超、報酬や福利厚生を充実させて優秀な人材を確保
物的資本:世界最大の製造設備や技術センターを有し、高い製造キャパと品質を維持
財務資本:世界トップ20に入る超巨大な資産
組織資本:ボーイングの価値提供に対して一貫した責任感を組織間で共有

巨大な企業ですが、目指すべき方向、重視すべき点、注力すべき事柄について明確に提示されており、製造業ならではの各部門の連帯感、組織の一体感が強いと思います。

ボーイングは現在、前代未聞の最大級の脅威に面しています。これを乗り越える現実的な案としては、軍用機の需要で食い繋ぐというところでしょう。

ボーイングは1918年のスペイン風邪、2回の世界大戦、1970年代の不況に耐えた実績があります。製造業という業種では経営資源を柔軟に活かして対応するのは苦手かもしれませんが、過去の例を見れば耐久力には自信があるというところでしょうか。

 

適切な経営戦略(経営戦略)

ボーイングの経営戦略が上手くマッチして市場シェアの獲得に繋がっているかを分析してみましょう。

ボーイングが取っている戦略は「差別化戦略」と言えそうです。

ボーイングの強みは研究・開発だと思います。その強みが現れた良い例がボーイング787でしょう。デビュー当時、航空会社にとって使い易さが好評で、各航空会社が続々と採用していきました。

ボーイング787の特徴のなかでも興味深いのは、ハイスペックで他社を圧倒するのでは無く、航空会社にとって嬉しい航空機であるところです。

ボーイング787の特徴は下記の通りです。
①低コスト(運用費)
②高い収益性、積載容量
③顧客重視の設計


(出典:boeing

航空会社にとって、ボーイング787は今までより性能が高いだけの機体ではありません。航行距離が長くて新しいルートが開拓できる、乗客がより多くの荷物を持っていける、顧客が景色を楽しんで貰える大きな窓等、航空会社が喜ぶ機体をボーイングは開発したと言えます。

市場を独占しているボーイングですが、それで高を括っている訳ではありません。常々、航空会社にとってベストな航空機を作る為に研究開発に励むところが、ボーイング唯一の強みであり、戦略が市場にマッチしていると思います。

 

ボーイングの決算内容

ボーイングの決算内容(2020年年次報告書)を一言で表すと「コロナで旅客機の需要が激減、運動成績(純損失)は前年度に引き続きの落第点。血液(キャッシュ)を生み出す力も無くなってしまい(営業キャッシュフローのマイナス)、銀行から大量の輸血(財務キャッシュフロー)で何とか延命するものの、脂肪(負債)がブヨブヨで健康状態は最悪!」という感じです。

損益計算書は真っ赤な赤字、賃借対照表は債務超過(資産を全て売却しても借金が残る状態)、キャッシュフロー計算書はフリーキャッシュフローが大きなマイナスと、決算内容は非常に厳しい内容です。

来期以降もフリーキャッシュフローがマイナスだと、どんどん負債が膨らんでいき、銀行が融資してくれなければ倒産ですので、あまり良い状況ではありません。

 

ボーイングの利幅は大きいか?(収益性)

ボーイングの収益性ですが、2020年度は赤字です。

収益性が良いか悪いかで言ったら、悪いということになります。

 

ボーイングは効率的にお金を回しているか?(効率性)

ボーイングがお金を効率的に回して儲かっているかを調べてみましょう。

効率性は総資産回転率という指標で見ます。財務諸表より、2019年の総資産回転率は0.57、2020年は0.38でした。

総資産回転率が悪化していますが、2020年は効率性が悪くなったというよりは、コロナの影響で売上が落ちた為です。

業界平均と比較してみましょう。航空・防衛関連業界の総資産回転率は0.62~0.67です(参考:csi market)。これと比較すると、ボーイングの効率性は平均より低いです。

参考迄、S&P 500の総資産回転率の平均は0.26です(参考:csi market)。これは意外な結果でしたね。ボーイングに限らず、工業セクターは収益性が低い分、売上が大きいので、総資産回転率が高くなっているのかもしれません。

上記より、ボーイングの効率性は平均より低いです。

 

ボーイングは今後大きくなるか?(成長性)

ではボーイングの成長性を評価していきましょう。


(出典:Yahoo!FInance

上記はボーイングの予想売上高成長率です。上記に記載が無いですが2021年の成長率は228%、2022年は33.40%です。

2021年の売り上げは2019年のレベルに近いところまで戻る予想です。にわかに信じ難いですが、3Q迄の実績はまずまずで、上記予想と成長率は達成できそうです。

2022年の予想は、2019年の売上を超える予想になっていますが、少し楽観的過ぎます。航空業界の需要ですが、2022年はまだ2019年のレベルに戻らない予想です(参照:iata)。なので、良くても2019年と同じ売上、成長率で言うと17%くらいになる筈です。

競合と比較すると、エアバスの2022年予想成長率が13.80%、ボンバルディアが9.40%、エンブラエールが19.00%、テキストロンが7.70%(参照:yahoo!finance)なので、単純比較すればボーイングの成長率は高いと言えます。しかし航空機業界全てが大打撃を食らっており、マイナスから回復する局面ですので、ボーイングが成長しているとは一概には言えません。

上記を纏めると、ボーイングの成長性は普通と言えるでしょう。  

 

ボーイングは倒産しないか?(安全性)

ボーイングの安全性をチェックします。


(出典:macrotrends

短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率は上記の通り(3つのグラフの一番下)です。

ボーイングは長年ずっと流動比率が低く、現在は0.41と、基準となる1.00を下回っています。

賃借対照表を見ると、流動負債の大部分が前受け金です。顧客から預かっているお金であり、納入時には売上金になるので、返済する必要のあるお金とは少し性質が異なります。上記の流動比率について、実際には短期の資金繰りはそこまで悪くないと考えて良いでしょう。

借金が占める割合を示す自己資本比率を見ると、2020年、2019年は債務超過です。借金が多すぎて、健康な状態ではありません。

キャッシュフローについて、2020年は営業キャッシュフローがマイナス、投資キャッシュフローもマイナス、財務キャッシュフローが大きなプラスです。キャッシュを生んでいない、資金繰りが不味い状態の企業の典型的なキャッシュフロー計算書です。未だ銀行からお金が借りられますが、今後このキャッシュフローが続けば確実に倒産です。

上記を纏めると、ボーイングの安全性は非常に低いです。

 

ボーイングは割安か?(割安度)

ボーイングが割安かどうかを判断する為に、PER(株価収益率)という割安度を示す指標を中心に各種分析をしてみましょう。  

 

ボーイングの株価(パフォーマンス)

既述の通り、ボーイングの収益性は悪く、成長性も赤字から回復を目指している状態というものでしたので、株価もまあまあ、落ち込んでいる筈ですが、実際にはどうでしょうか?


 (出典:yahoo!finance

上記は5年間の株価チャートです。

予想通り、ボーイング(青線)は競合と比較しても真ん中くらい、S&P 500よりパフォーマンスが低かったです。  

 

ボーイングの実力評価(PERと収益性、成長性)

次に割安度を示すPER(株価収益率)という指標が、その銘柄の実力に反して低いのかどうかを見ます。


(参照:yahoo!finance

上記はPERと利益率(収益性)、成長率をプロットしたものです。

グラフの右に行くほど実力が高く、上にいくほど株式市場からの評価が高いことを意味します。青線より左上は割高、右下は割安ということです。

利益率や成長性を考慮すると、ボーイングはまずまず、実力より株価が高くも低くも無いという感じです。株価チャートは冴えない内容で、実力相応の株価に落ち着いていると言えそうです。

 

ボーイングの株価(割安度)の推移


(出典:macrtrends

上記はボーイングのPER(一番下のグラフ)です。

急にPERが上がると今は割高、逆に急に下がると割安ということが分かります。

ボーイングは赤字に転落しているので、PERはマイナスです。株価は赤字に転落して確かに下がっていますが、まずまずの水準をキープしています。流石は世界のボーイング、がっつり赤字でも投資家の期待感はさほど下がらず、現時点では割高だと言えます。  

 

ボーイングの理論株価

ボーイングの理論株価を超ざっくり計算してみましょう。

先に結論を述べると、理論株価は764.87ドル、2021年12月5日の株価は198.49ドルと理論株価の3分の1以下で、現在の株価はかなり割安だと言えます。

さて、理論株価の計算方法ですが、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を用いて計算しました。

本来は過去の財務諸表から、将来の財務諸表を厳密に計算しますが、ここでは

・今後10年分のフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを除いたもの)は、過去5年分のフリーキャッシュフロー(参照:reuters)から予想値をざっくり設定
・リスクフリーレート(リスク0の投資先の利回り)は米国10年国債の利回り(参照:marketwatch
・ベータ(個別の株式のリスク)は株式市場で一般に公開されているデータ(参照:yahoo!finance
・マーケットリスクプライム(投資家が株式に期待するリターン)はS&P 500(米国大企業500社)の過去10年のリターンの平均値(参照:macrotrends
・有利子負債資本コスト(企業が借りている借金の金利)やD/Eレシオ(負債と資本金の比率)は最新の決算書を参照
・永久成長率は米国の物価上昇率の過去データを参照(参照:trading economics
・必要手許現預金は月商1か月分
・保有している証券、その他流動資産、その他固定資産は余剰投資資産と想定

という前提でざっくり計算しました。

計算結果は下記の通りです。

  

 

結局ボーイングの株価は割安なのか?

上記の分析結果を見ると、現在は実力相応の株価に落ち着いているものの、将来生み出すキャッシュを考慮すると割安となりました。

現在の株価が正しいとして、理論株価と何故乖離があるのかを考えてみます。

先ず財務状況が悪く、投資家がボーイングへの投資を敬遠している可能性が高いです。大企業と言えど、銀行からの融資が絶たれれば倒産です。ボーイングへの投資のリスクが高いと考えている投資家は多い筈です。

ベータが大きく、投資先としてリスクが高いのも関係がありそうです。

あと、理論株価の計算において将来のキャッシュフローを楽天的に設定してしまったかもしれません。現時点でボーイングはフリーキャッシュフローがマイナスですが、理論株価の計算においては2021年にはプラスに転換、2024年にはコロナ前のフリーキャッシュフローに戻る前提で計算しています。しかし、このまま旅客機需要が低迷したままで、今後ずーっとフリーキャッシュフローがマイナスの可能性も十分にあります。

ボーイング含め、旅客機の需要や旅行の需要が今後どうなるか、将来の不透明感が、理論株価との乖離を生んでいると考えられそうです。

この不透明感が解消されるには、海外旅行の規制が今後どうなるかに掛かっていると言えます。次のバケーションシーズンで、どれだけ旅行者が増えるかが1つの判断基準になるでしょう。それ迄はボーイングの株価も低迷が続きそうです。

 

ボーイングは配当を出しているか(配当)

ボーイングは配当を行っていましたが、2021年現在は配当を止めています。

配当が払えないくらい、キャッシュに余裕が無いということです。やはり経営が厳しい印象です。

 

ボーイングの総評

以下は私個人が行った銘柄評価で、特定の企業や従業員、株主を攻撃するはありません。又、各銘柄について絶対的に正しい評価を議論するものでも無い為、私個人の銘柄評価に対する非難や誹謗中傷、嫌がらせはお止め下さい。

さて、しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、ボーイングの総合評価は60点です。

経営資源、競争戦略含めて非常に魅力的で素晴らしい企業だと思いますが、やはりこの厳しい環境下において、財務状況が予想以上に悪かったと驚きました。フリーキャッシュフローがプラスに戻れば良いのですが、下手したらこのままキャッシュフローが改善せずに沈没という可能性も0ではありません。

上記より、ボーイングの株は「保持」というのが私個人の判断です。業績は回復しているので株価は下がらないとは思いますが、旅行需要が戻る予兆が見える迄は、これ以上株価が上がることも無いと予想します。

以上、「航空機需要低迷でボーイングの株は今が買いか?BAの銘柄分析」でした。

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