(出典:AZO CLEANTECH)
さて、今回も再生可能エネルギー関連銘柄を続けて紹介します。
第6回はブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズ(NYSE: BEP)を紹介したいと思います。これまた私の知らない企業でしたが、再生可能エネルギー銘柄として注目を集めているようです。
では企業分析、決算分析をしていきましょう!
目次
- 1 ブルックフィールド・リニューアブルの企業概要、事業内容(単純事業)
- 2 ブルックフィールド・リニューアブルのサービス、商品(商品力)
- 3 ブルックフィールド・リニューアブルの競合、業界構造(競争要因、参入障壁)
- 4 発電の市場規模(社会需要)
- 5 ブルックフィールド・リニューアブルの決算内容
- 6 ブルックフィールドの利幅は大きいか?(収益性)
- 7 ブルックフィールドはガンガンお金を回しているか?(効率性)
- 8 ブルックフィールドは今後大きくなるか?(成長率)
- 9 ブルックフィールドは倒産しないか?(安全性)
- 10 ブルックフィールド・リニューアブルの配当金(配当)
- 11 ブルックフィールドは割安か?(割安度)
- 12 ブルックフィールド・リニューアブルの総評
ブルックフィールド・リニューアブルの企業概要、事業内容(単純事業)
ブルックフィールド・リニューアブルは、ブルックフィールド・アセット・マネジメントという資産運用会社のグループ会社です。年次報告書には、ブルックフィールド・リニューアブルは再生可能エネルギー資産に直接投資していると記載があります。要は再生可能エネルギー関連の投資会社ですね。
ブルックフィールド・リニューアブル自体の歴史はそこまで古くないですが、ブルックフィールド・アセット・マネジメントの歴史は非常に古く、120年前から電力関連の資産運用を行っているそうです。
年次報告書には脱炭素への貢献アピールが記載されており、世界中に多くの再生可能エネルギー資産を有し、56TWもの電力を発電しつつ、同時に2,600万トンの二酸化炭素排出削減に貢献しているとのことです。
上記の通り、保有している資産(売上)のうち大半が水力発電、次に風力、太陽光と送電がだいたい同じくらいです。社名の通り、まさに100%再生可能エネルギーの企業ですね。因みに、資産の半分以上は北米です。
ブルックフィールド・リニューアブルは資産運用会社なので、実際に電力を一般家庭等に届けたり、発電設備のメンテナンス等を行ったりはしません。資産を保有するだけの投資家で、その事業内容は非常にシンプルですね。
ブルックフィールド・リニューアブルのサービス、商品(商品力)
ブルックフィールド・リニューアブルのサービスや商品の評価は難しいですね、何故なら、顧客に提供する商品もサービスも無いからです。
では、再生可能エネルギーの資産運用という観点で、ブルックフィールド・リニューアブルの長所を見ていきましょう。
年次報告書によると、ブルックフィールド・リニューアブルの強みは、世界中に有しているネットワーク(情報網)を活かした、優良な資産の獲得力、豊富な人員を総動員しての運用能力、融資を行える資金力等です。再生可能エネルギーに特化した投資判断力、調査力、効率を高めていく運用ノウハウは、競合他社と比較すると目を見張るものがあるでしょう。
ブルックフィールド・リニューアブルの競合、業界構造(競争要因、参入障壁)
ブルックフィールド・リニューアブルについて、5フォース分析をしましょう。先ずは直接の競合です。再生可能エネルギーのオーナーが直接の競合になるので、電力会社、例えば以前紹介したネクステラ・エナジーや、イベルドローラ等が競合になりそうです。
【関連情報】ネクステラ・エナジー(NextEra Energy)の決算情報
電力会社との再生可能エネルギー開発競争もありますが、それ以外にも再生可能エネルギーに投資したい企業等が競合になるかもしれません。
顧客との力関係については、資産運用会社にとって顧客はいない、強いて挙げれば資金を提供してくれる株主くらいでしょうか。ブルックフィールド・リニューアブルの場合はブルックフィールド・アセット・マネジメントが大株主なので、株主から強烈なプレッシャーがあるということも無さそうです。
仕入先との力関係はどうでしょうか。「仕入れ」と言って良いのか分かりませんが、一先ず発電設備を実際に建設、運用する会社が、ブルックフィールド・リニューアブルにとっての「仕入先」になりそうです。業者にとってみれば、ブルックフィールド・リニューアブルはお金を出してくれる大事な大事なお客様です。一方、ブルックフィールド・リニューアブルにとってみれば、発電設備を建設する業者の選択肢は幾つかあるでしょう。入札形式にして業者同士を戦わせるケースもあるので、仕入先に対する交渉力は非常に強そうです。
代替商品の脅威について、ブルックフィールド・リニューアブルは商品を持ち合わせていないですし、資産運用が明日になって急に何か別のものに取って代わられることは無いので、この点は考慮する必要は無いでしょう。
新規参入者について、参入してくる業界があまりにも広すぎて、新規参入者に関する情報を取るのが難しいですが、恐らく再生可能エネルギー資産をバンバン持って利益を出そうという企業は、よほどお金に余裕がある超大企業を除き、そんなに多くないでしょう。
参入障壁について、極論、お金を持っていれば誰でも参入できる業界だと思います。お金があればと言っても、メガソーラーの建設には約3億円掛かりますので(参照:日本経済新聞)、中小企業がポンッと出せる金額では無いですね。これ程の金額の資産をバンバン持つと、保有資産も相当膨れ上がってしまいますね。従って、有象無象の輩が簡単に参入できる業界では無さそうです。
発電の市場規模(社会需要)
(出典:Our World in Data)
上記は再生可能エネルギーの発電量です。これがそのまま需要、電力が売れた量を示す訳では無いですが、脱炭素が推し進められているなか、再生可能エネルギーをどんどん増やしていくこと、どんどん使っていくことは間違い無いでしょう。
ブルックフィールド・リニューアブルの決算内容
ブルックフィールド・リニューアブルの2020年決算内容を一言で表すと「前期よりは水力発電の条件が悪かったので運動量減少(売上減少)、運動成績は落第点(赤字)に転落。けれど血液を作る力は強く(営業キャッシュフローのプラス)、筋トレをしてもまだまだ余裕で(投資キャッシュフローのマイナス)、血液量が増えて(期末現金残高)健康状態良好!」という感じです。
ブルックフィールド・リニューアブルは電力会社と異なります。電力会社は自社で発電所の運用を行うので、設備の保有数、資産に限度がありますが、資産運用会社であるブルックフィールド・リニューアブルは、莫大な資産を抱えてリターンを上げてナンボです。
従って、電力会社も設備の減価償却が大きいのですが、ブルックフィールド・リニューアブルは電力会社よりも更に減価償却が大きくなります。
その結果が上記の通り、損益計算書とキャッシュフロー計算書に表れる差です。損益計算書は赤字でボロボロ、一方で減価償却は実際にキャッシュが発生してないので計算が調整され、キャッシュフロー計算書はフリーキャッシュフロー(営業ー投資キャッシュフロー)がプラスでピカピカの内容という、真逆の内容になるのです。
企業の良し悪しを判断する場合はキャッシュフロー計算書を重視した方が良いと思います。損益計算書では黒字で経営状態が良く見えても、実際はどんどんキャッシュが出ていくようであれば、財務状況が悪化して倒産まっしぐらだからです。
ブルックフィールド・リニューアブルの場合、パッと見では赤字企業ですが、実はちゃんとキャッシュを生んでいる優良企業です。電力会社よりもキャッシュを生み出す力が強くて安定感があると言えます。
ブルックフィールドの利幅は大きいか?(収益性)
ではブルックフィールド・リニューアブルの収益性をチェックしますが、ブルックフィールド・リニューアブルは今期は赤字です。
単純比較すれば他の企業は黒字なので、ブルックフィールド・リニューアブルの収益性は低いということになります。
ブルックフィールドはガンガンお金を回しているか?(効率性)
ブルックフィールド・リニューアブルがお金を効率的に回して儲かっているかを調べてみましょう。
効率性は総資産回転率という指標で見ます。財務諸表より、2019年の総資産回転率は0.08、2020年は0.07でした。回転率はほぼ一定ペースですね。
業界平均と比較してみます。電力業界の総資産回転率は0.21~0.22です(参照:csi market)。業界平均よりは、ブルックフィールド・リニューアブルの回転率は低いです。
参考迄、S&P 500の総資産回転率の平均は0.26です(参考:csi market)。電力業界は設備の金額が大きく、設備を運用してナンボの業界なので、他の業界よりは回転率が低くなる傾向があります。
上記より、ブルックフィールド・リニューアブルの効率性は平均より下です。
ブルックフィールドは今後大きくなるか?(成長率)
ではブルックフィールド・リニューアブルの成長性を評価していきましょう。
(出典:macrotrends)
上記はブルックフィールド・リニューアブルの売上(上)と一株当たり純利益、EPS(下)です。
売上は綺麗な右肩上がりで成長していますが、EPSは近年マイナスで赤字、マイナス成長となっています。
EPSがマイナスになっているのは既述の通り、保有する設備の規模が大きくなって減価償却が大きくなっているからで、必ずしもブルックフィールド・リニューアブルの成長性が低いことを意味しません。
(出典:yahoo!finance)
上記はブルックフィールド・リニューアブルのEPS、売上高予想です。
2021年の売上高成長率は9%、EPSの成長率はマイナスです。1~3Qの実績を見た限りでは、売上は上記予想を上回り、EPSも上記予想よりマイナスが大きくなりそうです。
既存の設備の効率向上、新たな資産の確保によって、売上が更に拡大しています。それに合わせて減価償却等の費用も増加しているので、赤字額も大きくなっているということです。
2022年の売上高成長率は3.50%、EPSはプラスに転じています。
成長スピードは2022年に少し落ちるようです。資産(設備)の獲得ペースを落とす、水量の減少(水力発電の発電量低下)、気候(風力や太陽光の発電量)等、種々の要因が考えられます。
アメリカの電力売上はここ最近は高止まりです。インフレ率程度しか成長は期待できない筈です。それらを考慮すると、ブルックフィールド・リニューアブルの売上高成長率3.50%は実現可能な数字だと思います。
競合と比較すると、アルゴンキンの2022年売上高成長率は20.60%、ネクステラ・パートナーズは43.20%、オーマットは45.50%、アトランチカは2.90%なので、単純比較すればブルックフィールド・リニューアブルの成長率は低いです。
上記を纏めると、ブルックフィールド・リニューアブルの成長率は低いでしょう。
ブルックフィールドは倒産しないか?(安全性)
ブルックフィールド・リニューアブルが倒産する心配があるかどうか、安全性をチェックします。
短期の支払い能力を示す、流動資産÷流動負債=流動比率は60%(2020年)で、100%を下回っており、あまり良い水準とは言えません。
自己資本比率は43%と、下限の30%を上回っており、倒産の心配は無さそうです。
キャッシュフローは、営業キャッシュフローが大きなプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローが小さなマイナスです。優等生そのものの完璧な資金繰りです。
上記を纏めると、ブルックフィールド・リニューアブルの安全性は高いです。
ブルックフィールド・リニューアブルの配当金(配当)
(出典:macrotrends)
上記がブルックフィールド・リニューアブルの配当ですが、直近では配当金が減少しており、2021年12月の配当金は0.304ドル(年間1.216ドル)、利回り3.34%です。
配当が減少しているのは気になりますが、それでも利回りは高い部類ですし、配当だけで言えば魅力的な銘柄だと言えます。
ブルックフィールドは割安か?(割安度)
ブルックフィールド・リニューアブルが割安かどうかを判断する為に、PBR(株価純資産倍率)という割安度を示す指標を中心に各種分析をしてみましょう。
ブルックフィールド・リニューアブルの株価(パフォーマンス)
既述の通り、ブルックフィールド・リニューアブルは収益性も成長性も低かったので、株価(リターン)もあまり良く無さそうです。実際はどうでしょうか?
(出典:yahoo!finance)
上記はブルックフィールド・リニューアブルと競合の株価チャートです。予想に反してブルックフィールド・リニューアブルのリターンはかなり高く、S&P 500のパフォーマンスも上回るものでした。
ブルックフィールド・リニューアブルの株価(割安度)の推移
ブルックフィールド・リニューアブルのリターンがかなり高かったですが、株価の高い安いだけでは判断が難しいので、割安度をチェックしてみましょう。
(出典:macrotrends)
本来はPER(株価収益率)を見て割安度を分析するのですが、ブルックフィールド・リニューアブルは赤字企業なのでPERが使えません。そこでPBRという、PERに並ぶ重要な株価指標を使って分析をしてみます。
上記はブルックフィールド・リニューアブルを含む各企業のPBRです。
PBRが1を上回ると割高、下回ると割安と言えます。
直近ではブルックフィールド・リニューアブルのPBRが増加傾向なので、株価が上昇傾向、投資家からの人気が集まりつつあり、割安から割高傾向です。
競合と比較すると、ブルックフィールド・リニューアブルは一番PBRが低く、割安だと言えます。
ブルックフィールド・リニューアブルは5年間のリターンが高く、株価は既にかなり高かったのですが、資本金の規模を考えればまだまだ割安という、驚きの結果でした。
ブルックフィールド・リニューアブルの実力評価
いくらブルックフィールド・リニューアブルが割安でも、実力が低ければ意味がありません。実力とPBRのバランスをチェックしてみましょう。
(参照:yahoo!finance)
上記はPBRと利益率(収益性)、成長率をプロットしたものです。
グラフの右に行くほど実力が高く、上にいくほど株式市場からの評価が高いことを意味します。青線より左上は割高、右下は割安ということです。
ブルックフィールド・リニューアブル(BEP)は確かにPBRが低いのですが、実力もそこまで高くないようです。寧ろ今の実力が正しく反映されれば、株価はもっと低くても良いということです。
ブルックフィールド・リニューアブルの理論株価
ブルックフィールド・リニューアブルの理論株価を超ざっくり計算してみましょう。
先に結論を述べると、理論株価は43.49ドル、2021年12月25日現在の株価は35.50ドルと理論株価より少し安く、やや割安だと言えます。
さて、理論株価の計算方法ですがDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を用いて計算しました。
本来は過去の財務諸表から、将来の財務諸表を厳密に計算しますが、ここでは
・今後10年分のフリーキャッシュフローは、過去5年分のデータ(参照:reuters)から予想値をざっくり設定
・リスクフリーレート(リスク0の投資先の利回り)は米国10年国債の利回り(参照:marketwatch)
・ベータ(個別の株価変動リスク)はブルックフィールドの過去のリターンから計算された数値を参照(参照:yahoo!finance)
・マーケットリスクプライム(投資家が株式に期待するリターン)はS&P 500(米国大企業500社)の過去10年のリターンの平均値(参照:macrotrends)
・有利子負債資本コスト(企業が借りている借金の金利)やD/Eレシオ(負債と資本金の比率)は最新の決算書を参照
・永久成長率は米国の物価上昇率の過去データを参照(参照:trading economics)
・保有しているその他流動資産、その他固定資産等は余剰投資資産と想定
という前提でざっくり計算しました。 計算結果詳細は下記です。
結局ブルックフィールドは割安か、今後株価は上がるのか?
上記の分析結果を見ると、割高だったり割安だったり、バラバラな内容でした。
現在の株価は割安なのかどうか、今後株価は上がるのかを考察してみます。
先ず流行りの再生可能エネルギーということで、投資家からの人気が集まり、実力に反して株価が高くなっていることは往々にしてありそうですね。実際、収益性や成長性を考慮すれば、ブルックフィールド・リニューアブルの株価は少し高いという判断になります。
一方で理論株価の計算は、フリーキャッシュフローはかなり厳しく見積もったので大きく間違いは無さそうです。
ブルックフィールド・リニューアブルはかなり特殊な企業です。一見すると実力は低く、株価もそれに合わせて低くなりそうなのですが、キャッシュを生み出す力が強いので理論株価は高くなるという、不可解な評価結果になります。
「Cash is king」、現金が重要であり、現金を生み出す力があるのが本当の実力だとすれば、ブルックフィールド・リニューアブルは割安という判断になるのでしょう。
上記より、ブルックフィールド・リニューアブルの株価は年々上がってきているので、上昇を続けてあと2~3年後には理論株価である43ドルに達し、それ以降は株価が殆ど上がらないと予測します。
ブルックフィールド・リニューアブルの総評
私個人の銘柄評価基準に照らし合わせた、ブルックフィールド・リニューアブルの総合評価は63点です。
再生可能エネルギーの投資先として最大手の企業がブルックフィールド・リニューアブルです。電力会社には無い、超巨大な資産を運用してがっつりキャッシュを生み出す魅力がある投資先だと思います。
上記より、ブルックフィールド・リニューアブルの株は「買い」が私個人の投資判断です。
株価上昇余地はそこまで高くないので、目標株価に到達したらササっと売るのが賢明な判断だと思います。
以上、ブルックフィールド・リニューアブルの決算情報でした。
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