工業セクター 米国株

ディーゼルエンジンメーカー、カミンズの株価は今安いのか?CMI(米国株)の銘柄分析


(出典:Cummins

前回に続いて、今回も燃料電池関連の株を紹介したいと思います。

脱炭素でどうなるのか分かりませんが、次世代の車としてEVと主導権を争っているのが燃料電池ですね。現在はEVが先行している印象ですが、燃料電池は長距離を走行できますし、大きなバッテリーが必要無いので、今後巻き返す可能性も十分にあると思います。

そこで、燃料電池関連の銘柄で、今回はカミンズ(NYSE: CMI)を分析したいと思います。カミンズは元は燃料電池メーカーでは無いですが、燃料電池関連の株としても注目されているらしいです。

ではさっそくいってみましょう!  

 

カミンズの企業概要、事業内容(単純事業)


(出典:cummins

カミンズは1919年創業の、コロンバス(アメリカ中央部)に拠点を構えるディーゼルエンジンメーカーです。

ディーゼルエンジンと聞けばバスやトラックを思い浮かぶかもしれませんが、農業のトラクター、データセンター等の電源、パワーショベル、船、鉄道等、幅広い産業でディーゼルエンジンが使われています。日常生活ではパッと見ませんが、産業を支える重要な技術です。

カミンズは燃料電池も製造しています。20年以上前から燃料電池を製造しているらしく、脱炭素トレンドで焦ってとりあえずパッと燃料電池に取り組んだわけでは無いので、その技術力は信頼できそうです。納入実績の一例としては、ドイツ向けに燃料電池の電車を納入しています(参照:cummins)。他にはバスやトラック、船舶用等も実績があります。

カミンズの主力事業はディーゼルエンジンです。燃料電池が足を引っ張らないか心配ではありますが、一方で強制的に脱炭素が推し進められるなか、カミンズはディーゼルエンジン1本でやっていくわけにはいかないでしょう。ディーゼルエンジンと燃料電池の2本足で取り扱う製品ラインナップが少し多いですが、顧客ベースは今までと同じでカミンズがこれまで培ってきたものを活かしているので、投資家にとってカミンズの多角化リスクはそれほど高くはないでしょう。

 

ディーゼルエンジンの需要(社会需要)

ディーゼルエンジンの市場規模は2020年で337億ドルでした(引用:2NEWS)。

今後年間4.9%で成長し、2026年には477億ドルに達すると予想されています。

脱炭素に曝されて、ディーゼルエンジンの将来は危機にあります。一方で、年間4.9%は少し楽観的過ぎるとは思いますが、すぐに縮小することは無いと思っています。

というのも、現時点では代替案が無いからです。カミンズが作っているのは産業用の大型ディーゼルエンジンです。重量が数トンの自動車で、走るだけならバッテリーとモーターだけでも可能でしょう。しかし産業用は数十トンの重量ですし、走らせるだけでは無く、油圧ポンプやコンプレッサー等、様々な機械を動かします。バッテリーでは明らかに出力が足らないのです。

自動車と同じように「脱炭素だからディーゼルやめまーす」なんてしたら、産業が崩壊してしまいます。 代替エネルギーの技術が確立するまで、ディーゼルエンジン市場が無くなることは無いでしょう。

 

ディーゼルエンジンの業界構造(競争要因)

ディーゼルエンジン業界について5フォース分析をしてみましょう。


(出典:statista

2015年と少し古いデータですが、トラック用のディーゼルエンジンの市場シェアは上記の通りです。カミンズが業界トップで、他に6社メーカーがあります。日本だとヤンマーやクボタが存在感を放っていますね。世界をみるともう少しメーカーが多いですが、何十社もの競合が競い合う他の業界よりはマシでしょう。

顧客との力関係ですが、エンジンメーカーにしてみれば顧客は各産業に無数といるわけです、顧客が大企業といえ、たかだか数台のエンジンしか買わないお客の言うことを聞く義理はありません。カミンズの交渉力は絶大(そもそも顧客の言うことなど聞かない)でしょう。

仕入先との力関係ですが、白金やパラジウム等のレアメタル等、一部供給源が限定される材料や部品はありますが、基本的にはエンジンは鉄の塊なので、仕入先には困らない筈です。

代替品の脅威ですが、既述の通り現時点ではディーゼルエンジンほど産業・工業の現場で大出力を得られる装置は他に無いです。水素やアンモニア、天然ガス、バイオディーゼル等、燃料が替わることはありそうですが、エンジンに替わるエネルギー装置は今のところ無さそうです。

新規参入者について、ディーゼルエンジンに新規参入したという話しは聞いたことがありません。業界の歴史は古いですし、爆発的に成長することも無いですし、消費者の目には触れない地味な業界です。

上記を纏めると、ディーゼルエンジン業界の競争はあまり無さそうです。メーカーも顧客もプレイヤーが決まっている業界で、技術も既に確立していて大きな進化はありません。競争で無意味に消耗させられることは無いですが、一方で売上を大きく伸ばす術が無く、大きな成長を期待できない業界だと思います。

 

カミンズは顧客を独占しているか(独占力)

既述の通り、カミンズはディーゼルエンジン業界トップで、100%では無いですが顧客を独占していると言えます。

ディーゼルエンジンで一番重要なのは信頼性と耐久性です。エンジンが止まってしまうと現場での作業が出来なくなり、業界によっては運用に重大な影響が出てしまいます。なので、不具合が少ない、頑丈で評判が良いエンジンは顧客に好まれます。

カミンズのエンジンの評判をあまり聞いたことは無いですが、そこまで決定的に悪いということは無さそうです。ディーゼルエンジンを実際に使う現場のおじさんは、製品が良くても褒めることは無く淡々と使い続けますが、悪いと猛烈にクレームしますからね。

カミンズが市場を独占しているのは、(悪く言うつもりは無いのですが)カミンズのエンジンが特別に優れているという訳では無く、他に選択肢が無いからです。特に高出力のものになると、取り扱っているメーカーが限定されます。ディーゼルエンジンは信頼性が命、つまり過去の実績があって特に問題無いかが一番大切です。その点、既に世界中で実績を積み上げているカミンズには大きな利点があります。

 

カミンズに似た事業を他社が始めるか(参入障壁)


(出典:cummins

一般論として装置製造には工場や専用の設備、材料等の仕入れ資金、技術士や開発の技術者等の人員が必要なので、ITや通信サービス、コンサルや小売といった事業よりは参入障壁が高いです。

既述の通り、ディーゼルエンジンは顧客が決まっている業界です。後から参入しても市場を奪える見込みが立ちません。カミンズと同じディーゼルエンジンメーカーは他にもいますが、それ以上にプレイヤーが増えることは皆無でしょう。 

 

カミンズの決算内容

カミンズの決算内容(2020年年次報告書)を一言で表すと「コロナで設備投資が控えられてエンジンの売れ行きが落ちて運動成績(純利益)は昨年の記録を更新できず!けれど2020年も栄養をしっかり蓄えて筋肉や骨を太くして、体(資産総額)が大きく成長」という感じです。

カミンズの決算内容は成熟企業の典型的な内容でした。現金がやや少なかったですが、2020年は十分なレベルになっています。借金の多さやキャッシュフロー等、特に大きな問題は見当たらなかったです。  

 

ポイント1


 (出典:2020年年次報告書

損益計算書で注目すべきは売上です。2020年は残念ながら売上が昨年より落ちて、粗利も昨年より小さくなっています。

コロナの影響で設備投資が控えられ、主力のディーゼルエンジンを中心に全ての製品の売上が、全ての地域(世界)で落ち込みました。産業(BtoB)全体がコロナ禍で苦しんだので、カミンズも例外なく2020年は苦しい年となりました。

他に注目したいポイントは売上原価で、2020年は原価率が75%にも上ります。カミンズの利益率は詳しく後述しますが、工業セクターの企業は材料費や人件費が高く、利益が小さいですね。カミンズも今後収益性をどう改善するかが、今後の株価を握る鍵になりそうです。

因みに、カミンズの燃料電池の売上は全体の1%にも届きません。今後燃料電池が不調でも、経営には大きな影響を及ぼさないと考えられます。

 

ポイント2


 (出典:2020年年次報告書

賃借対照表では純資産に注目です。

2020年は純資産が僅かですが増えています。増加の主な要因は利益余剰金で、損益計算書で上げた利益を確り蓄えており良い傾向です。

一方、自己資本比率は2020年に減少しており、借金の割合が増えています。借金が何故増えたんでしょうか?

上記に記載がありませんが、資産の部を見ると、2019年は現金がやや不足しており、2020年に大きく増えています。恐らく、借りたお金は余剰資金の貯蓄に使ったのでしょう。コロナ禍ですから、不測の事態にお金を備えておく意味もあったと思います。

カミンズの自己資本比率は今のところ問題無いですが、下がり続けるようであれば今後は注視する必要があります。

 

ポイント3


(出典:2020年年次報書

キャッシュフロー計算書は、2020年は営業キャッシュフローが大きなプラス、投資キャッシュフローは小さなマイナス、財務キャッシュフローは小さなプラスで、期末の現金及び現金同等物残高が増加しており、典型的な成熟企業のキャッシュフローで、盤石の内容です。

営業キャッシュフローに注目すると、上記の通り純利益よりも営業キャッシュフローが大きくなっています。中身を見ると、減価償却費が大きい他、買掛金、未払い金等により、本業により入ってきているキャッシュが純利益よりも大きくなっています。カミンズは損益計算書の見かけよりも、実際には多くのキャッシュが入ってくる企業と言えそうです。Cash is kingです、純利益が小さくても、キャッシュフローが大きいカミンズは高評価できます。

 

カミンズの利幅は大きいか?(収益性)

カミンズの収益性をチェックしていきましょう。


(出典:macrotrends

先ずは資本金に対してどれくらい効率的に収益を上げているかを示す、ROE(自己資本利益率)という指標を見ますが、上記の通り(青線がカミンズ)ROEは安定して20%前後の水準です。

競合と比較すると、直近ではカミンズのROEが一番低いですが、一方で以前からROEが一定で安定しています。

 


(出典:macrotrends

次に、ROEと似ていますが、お金を効率的に儲けていることを正確に表す指数、ROA(総資産利益率)を見ると、上記の通り(青線がカミンズ)やや上下変動はありますが、10%前後をキープしています。

競合と比較すると、ROAはカミンズが最も高い結果になっています。ROEは自己資本が小さいと有利に見えるので、ROAの方がどれだけ儲けているかを正確に表す数字です。従って、カミンズの方が競合よりもお金を儲ける力が強いと言えます。

 (出典:macrotrends

最後に、利益がどれくらい高いのかが分かる指標、売上高営業利益率を見ます。上記の通り(青線がカミンズ)、営業利益率は12%前後を推移しています。競合と収益性はだいたい同じくらいです。

因みに、全体平均と収益性を比較してみると、S&P 500の売上高営業利益率は16.24%です(参照:csi market)。ディーゼルエンジン業界はどうも収益性が他の業界より劣るようです。製造設備や仕入、労働者や研究開発費等、どうしても他の業界よりは原価率が高くなってしまう業界だと言えます。

上記を纏めると、カミンズの収益性は平均レベルだと言えます。 

 

カミンズはガンガンお金を回しているか?(生産性)

カミンズがお金を回してガンガン儲かっているかを調べてみましょう。

生産性は総資産回転率という指標で見ます。財務諸表より、2019年の総資産回転率は1.19、2020年は0.87でした。

総資産回転率が悪化していますが、2020年は生産性が悪くなったというよりは、コロナの影響で売上が落ちた為です。

業界平均と比較してみましょう。工業機械業界の総資産回転率は0.7~0.71です(参考:csi market)。これと比較すると、カミンズの生産性は非常に高いですね。

参考迄、S&P 500の総資産回転率の平均は0.26です(参考:csi market)。これは意外な結果でしたね。カミンズに限らず、工業セクターは収益性が低い分、売上が大きいので、総資産回転率が高くなっているのかもしれません。

上記より、カミンズの生産性は非常に高いと言えます。  

 

カミンズは今後大きくなるか?(成長性)

ではカミンズの成長性を評価していきましょう。

 
(出典:Yahoo!FInance

上記はカミンズの予想売上高成長率です。今年は21%、来年は8%と成長スピードが下がる予想です。ディーゼルエンジンでは業界トップを走るカミンズは、今後の伸びしろは限られているということでしょう。だから燃料電池に取り組んでいるのかもしれません。

競合と比較すると、キャタピラーが12.60%(参照:Yahoo!finance)、CNHインダストリアルが5.30%(参照:Yahoo!finance)なので、カミンズはまずまずと言ったところでしょうか。

上記を纏めると、カミンズの成長性は平均レベルと言えるでしょう。

 

カミンズは倒産しないか?(安全性)

カミンズの安全性をチェックします。


(出典:macrotrends

短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率は上記の通り(3つのグラフの一番下)です。カミンズの流動比率は一時期低くなりましたが、現在は基準となる1.00を超えており問題ないです。

借金が占める割合を示す自己資本比率は、2020年は39%、2019年は42%でした。悪化してはいますが、最低限の30%は超えており、現時点では問題無いです。

キャッシュフローについては既述の通り、盤石の資金繰りで安心感があります。今後も安定したキャッシュフローが期待できそうです。

上記を纏めると、カミンズの安全性は高いと言えます。

 

カミンズは割安か(割安度)

上記の通り、カミンズは収益性も成長性もまずまずの内容でした。であれば、株価もまずまずのパフォーマンスな筈です。実際にはどうでしょうか。


(出典:Yahoo!finance

上記はカミンズの株価チャートです(赤線)。競合と比較すると、5年間のパフォーマンスは競合5社のうち3番目で、予想通りまあまあな内容です。

S&P 500(水色)と比較すると、カミンズの方がパフォーマンスが低いです。カミンズに限らず、ディーゼルエンジン業界は収益性が劣るので、それで投資家から人気が無いのかもしれません。

では次に割安度を示すPER(株価収益率)という指標が、その銘柄の実力に反して低いのかどうかを見ていきましょう。



(参照:Yahoo!finance

上記のグラフは、上が予想利益率、下が予想成長率です。株式市場は将来の利益率や成長率が高いほど、その株を買うのでPERが高くなります。一般的に青い線の左上は割高、右下は割安と判断されます。

カミンズ(CMI)は利益率が高いほう、成長率は5社のなかでは真ん中くらいで、株式市場からの評価は概ね妥当な感じです。少し株価が安いように感じましたし、実際に予想PER=13は結構低い方ですが、カミンズの場合は実力相応の株価のようです。


(参照:macrotrends

次にPERの時系列変化を見てみましょう。上記の通り(一番下のグラフ)、PERは上がったり下がったりを繰り返して、10~20倍をうろついています。過去と比較して、今の株価が割高でも割安でも無いということです。

最後にカミンズの理論株価を超ざっくり計算してみましょう。

先に結論を述べると、理論株価は565.22ドル、2021年11月11日の株価は237.71ドルと理論株価の約半分で、今の株価は割安だと言えます。

さて、理論株価の計算方法ですが、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を用います。本来は過去の財務諸表から、将来の財務諸表を厳密に計算しますが、

・未来10年分のフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを除いたもの)は、過去5年分のフリーキャッシュフロー(参照:reuters)から予想値をざっくり決定
・資本コストについて、リスクフリーレート(リスク0の投資先の利回り)は米国10年国債(参照:marketwatch)、ベータ(個別の株式のリスク)はカミンズの過去の株価変動(参照:yahoo!finance)、マーケットリスクプライム(投資家が株式に期待するリターン)はS&P 500の過去10年間の平均値(参照:macrotrends)、有利子負債資本コスト(企業が借りている借金の金利)やD/Eレシオ(負債と資本金の比率)は最新の決算書を参照
・ターミナルバリュー(10年目以降のフリーキャッシュフローの現在価値の総合計)の永久成長率はアメリカの物価上昇率を参照(参照:trading economics
・必要手許現預金は月商1か月分、保有している固定資産(設備等)の20%は余剰投資資産

という前提で計算しました。計算結果は下記の通りです。

 

カミンズは配当を出しているか(配当)

カミンズは上記の通り配当を出しており、最新の利回りは2.29%と、高配当とは言えませんが、悪い数字ではありません。

上記の通り長年増配を続けており、配当を出せるだけキャッシュフローにも余裕があり、高評価できます。  

 

カミンズの総評

以下は私個人が行った銘柄評価で、特定の企業や従業員、株主を攻撃する目的はありません。又、各銘柄について絶対的に正しい評価を議論するものでも無い為、私個人の銘柄評価に対する非難や誹謗中傷、嫌がらせはお止め下さい。

さて、しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、カミンズの総合評価は80点です。

カミンズは業界トップのディーゼルエンジンメーカーで、実績がモノを言うディーゼルエンジン業界を牛耳っています。業界内では圧倒的な地位を築いていますが、そもそも地味で成長性が無く収益性も悪いディーゼルエンジン業界を投資家は高く評価していません。EPSの上昇に合わせて今後も株価は上昇する筈ですが、その人気度は限定的で、株価が爆発することは無いでしょう。その点、将来的に燃料電池が当たるかもしれない、とカミンズの株を持っておくのはアリかもしれませんね。

上記より、カミンズに投資するかどうか、一旦保留で「投資しない」というのが私個人の判断です。良い銘柄だとは思いますが、私なら、将来株価が爆発しそうな他の銘柄を探してみたいと思います。

以上、「ディーゼルエンジンメーカー、カミンズの株価は今安いのか?CMI(米国株)の銘柄分析」でした。

同じ燃料電池メーカーのプラグパワーについても詳しく調べた記事があります、そちらも是非御覧ください!

燃料電池に投資するならプラグパワーの株を買うべきか?PLUGの銘柄分析

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