工業セクター 米国株

農業機械業界のエリート、ディーアに投資すれば間違い無し!?DE(米国株)の銘柄分析


(出典:JOHN DEERE

前回から「農業&建設機械」を紹介しています。

先日、アメリカのバイデン大統領がインフラ投資法に署名しました。アメリカではインフラの老朽化が進んでおり、新しく建て替えをしなければいけない為、今回の投資法が成立したらしいです。これで即、建設機械がバンバン売れるという訳ではありませんが、建設機械業界にとってはチャンスですし、投資テーマとしても注目を浴びているとか。

今回ご紹介する銘柄はディーア(NYSE: DE)です!アメリカでトップの農業機械メーカーで、S&P 500(アメリカの大企業500選)にも選ばれており、知る人ぞ知る優良企業です。地味な業界ですが、もしかしたら投資価値があるかもしれません。

ではさっそくいってみましょう!  

 

ディーアの企業概要、事業内容(単純事業)


(出典:MACHINEFINDER

ディーアの歴史はなんと18世紀に遡ります!

社名であるJohn Deere氏はディーアの創設者で、上記のような鉄の鍬?(英語でSteel plowというのですが、日本語が分かりません・・・)を初めて商品化しました。

John Deere氏がディーアを創業したのは1848年になります。もうすぐ創業200年の会社なんて、聞いたことないです、凄いですね・・・

ディーアが製造しているのは芝刈り機等の庭用、耕運機等の農業用、ショベルカー等の建設用、スキッダー等の林業用の機械です。

製造している機械の幅は広いですが、モーターや油圧ポンプ、エンジンや操作キャビン等、基本的な技術は全て共通しています。現時点でディーアの事業多角化リスクはそれほど高くはないでしょう。    

 

農業機械の需要(社会需要)


 (出典:statista

上記は世界の農業機械の販売台数推移です。

かなりスローペース(年間4%)ですが建設機械の販売台数は徐々に伸びる予想です。

世界のGDP成長率(約3%)よりは少し高いので(参照:statista)、やや背伸びをした統計、予想だとは思いますが、4%の成長率はそこまで非現実的ではありません。

農業は人の食に直結するもので、他の業界とは異なり、コロナで大打撃を負っても農業を止める訳には行きません。一時的に設備投資が抑制されることはあっても、ずっーっと農業機器を買わないという状況は考えにくいです。

 

農業機械の業界構造(競争要因)

農業機械業界について5フォース分析をしてみましょう。


(出典:ResearchInChina

少し古いですが、上記は農業機械トップメーカーです。ディーアがトップ、CNHインダストリアル、AGROという順に続いています。農業機械メーカーが世界で6社ということはあり得ないですが、数十社ものメーカーがひしめく競争業界では無いでしょう。

顧客との力関係ですが、上記のように農業機械は複数メーカーがあるように見えますが、日本等、各地域にある代理店は2~3社くらいでしょう。現場に機械を届けてくれて、機械を買った後にもサポートしてくれるメーカーの選択肢はそれほど多くありません。

仕入先との力関係ですが、ディーアが作っている農業機械はエンジンやモーター等の装置や部品から構成されており、仕入先は特定の業者に限定されていない筈です。仕入先を他に切り替えるのはそこまで難しくは無いでしょう。

代替品の脅威ですが、今時は趣味で農業をやっている人でも機械を使います。人力は先ず無理ですし、他に代替案は無さそうです。

新規参入者について、農業機械の新勢力は中国勢だと思ったので調べたのですが、一番新しいメーカーで2007年創業でした(参照:TRACTORS)。恐らく毎年バンバン新規参入があるような人気業界では無いでしょう。

上記を纏めると、農業機械業界の競争はさほど激しく無さそうです。競争が無い楽な業界というよりは、あんまり高額で機械を販売できない(トラクターは高出力のもので1千6百万円くらい(参照:クボタ))ので、製造費用等を如何に抑えるかが重要だと思います。

 

ディーアは顧客を独占しているか(独占力)

既述の通り、ディーアは農業機械業界トップですが、マーケットを独占とまではいかないようです。

私の試算では、ディーアの世界シェアは約22%です(参照:Allied Market Research)。

ディーアの売上の大半はアメリカです。世界中、他の地域でもディーアは農業機械を発売していますが、農業大国の中国を始め、アジアや南米での売上はあまり大きくありません。加えて、農業機械は中国メーカーが多く、財布の紐が固い農家にとっては、ディーアの農業機械より他の安いメーカーの方が魅力的に映ることもあるでしょう。

 

ディーアに似た事業を他社が始めるか(参入障壁)


(出典:MACHINEFINDER BLOG

一般論として機械製造には工場や専用の設備、部品や材料等の仕入れ資金、技術士や開発の技術者等の人員が必要なので、ITや通信サービス、コンサルや小売といった資本が比較的少なくすむ事業よりは参入障壁が高いです。

既述の通り、農業機械は収益が圧迫されているビジネスです。機能が優れているからと言って、他社より高額で売ることは出来ません。従って、大量に効率的に生産するのが基本であり、マーケットシェアが無い新規参入者にはツライ業界の代表例でしょう。

 

ディーアの決算内容

ディーアの決算内容(2020年年次報告書)を一言で表すと「農業機械等の出荷量が減って運動成績(純利益)が昨年の記録を更新できなかったけれど、血液(キャッシュ)を生み出す力は非常に強く、有り余った血液は献血(財務キャッシュフローのマイナス)に回してもまだ残り、確り蓄えて健康状態万全で今後に備える!」という感じです。

ディーアの決算内容も典型的な成熟企業の内容でした。自己資本比率が小さいのがやや気になりますが、フリーキャッシュフローが非常に大きく、今後も滅多なことが無い限りは安定的にキャッシュを生み出せる会社だと思います。

2020年はディーアにとっても悪い年でした。コロナが与えた打撃とその影響の大きさ、今後の行方は計り知れないところがあります。しかし食べ物、農業は人々の生活に不可欠なものであることは間違い無く、何れ農業機械の需要が出てくることも間違いないでしょう。只、需要の回復に時間が掛かる可能性はありそうです。

 

ディーアの利幅は大きいか?(収益性)

ディーアの収益性をチェックしていきましょう。


(出典:macrotrends

先ずは資本金に対してどれくらい効率的に収益を上げているかを示す、ROE(自己資本利益率)という指標を見ますが、上記の通り(青線がディーア)ROEはかなり上下に振れて安定しませんが、現在は37%くらいです。

競合と比較するとディーアが一番ROEが高いです。


(出典:macrotrends

次に、ROEと似ていますが、より忠実にお金を儲ける力を示す指数、ROA(総資産利益率)を見ると、上記の通り(青線がディーア)上下変動が大きく、現在は7%です。

競合と比較すると、ROEとは変わって、ROAは競合のAGCOの方がディーアより高いです。ディーアはかなり財務レバレッジ(借金が多い)を利かせていると分かります。しかし、ROAは5%を超えれば良いと言われているので、ディーアのROAも十分に高いレベルです。


(出典:macrotrends

最後に、利益がどれくらい高いのかが分かる指標、売上高営業利益率を見ます。上記の通り(青線がディーア)、営業利益率も上下が激しいですが、現在は16%強です。

 競合と収益性を比較すると、ディーアが差をつけて一番になっています。機械は原価率が高くて収益性が低い業界ですが、その中で高い収益性を確保しているのは非常に魅力的で、他社と差をつける源の一つと言えるでしょう。

因みに、全体平均と収益性を比較してみると、S&P 500の売上高営業利益率は16.24%です(参照:csi market)。株式市場全体平均と比較しても、ディーアの収益力は劣りません。

上記を纏めると、ディーアの収益性は非常に高いです。  

 

ディーアは効率的にお金を回しているか?(効率性)

ディーアがお金を効率的に回して儲かっているかを調べてみましょう。

効率性は総資産回転率という指標で見ます。財務諸表より、2019年の総資産回転率は0.53、2020年は0.47でした。

総資産回転率が悪化していますが、2020年は効率性が悪くなったというよりは、コロナの影響で売上が落ちた為です。

業界平均と比較してみましょう。農業機械業界の総資産回転率は0.5~0.6です(参考:csi market)。これと比較すると、ディーアの効率性は平均と同じ、少し低いくらいです。

参考迄、S&P 500の総資産回転率の平均は0.26です(参考:csi market)。これは意外な結果でしたね。ディーアに限らず、工業セクターは収益性が低い分、売上が大きいので、総資産回転率が高くなっているのかもしれません。

上記より、ディーアの効率性は平均レベルです。

 

ディーアは今後大きくなるか?(成長性)

ではディーアの成長性を評価していきましょう。


(出典:Yahoo!FInance

上記はディーアの予想売上高成長率です。今年は27.7%、来年は12.70%と成長スピードが下がる予想です。

2021年の売上予想が2019年を超えているので、成長率の予想が少し高すぎる気がしましたが、直近の決算を確認するとディーアの売上はかなり好調で、「予想売上高(高) 」の400億ドルも超えそうな勢いです。

2022年の予想成長率ですが、農業機械業界の成長率が4%、物価上昇が5%だと仮定すれば、ディーアの成長率12%は実現不可能な数字では無さそうです。

競合と比較すると、CNHインダストリアルの予想売上高成長率(2022年)が6.10%(参照:Yahoo!finance)、AGCOが7.20%(参照:Yahoo!finance)、クボタが4.4%(参照:yahoo!finance)なので、ディーアの成長性が一番高いです。

上記を纏めると、ディーアの成長性は高いと言えるでしょう。  

 

ディーアは倒産しないか?(安全性)

ディーアの安全性をチェックします。


(出典:macrotrends

短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率は上記の通り(3つのグラフの一番下)です。

ディーアの流動比率は一時期を除いて非常に高く、現在も基準となる1.00を超えており問題ないです。

借金が占める割合を示す自己資本比率を見ると、2020年は17%、2019年は15%でした。 びみょーに改善傾向ではありますが、最低限の30%を下回っています。

ディーアは売掛債権担保融資(売掛金を担保にした融資)が非常に大きいです。顧客に個人農家が多く、一括で農業機械の代金を支払えないから、ディーアが融資を提案しています。

顧客への融資が多いと、売掛金の回収に時間が掛かるので、ディーアの資金回転率が悪くなります。するとビジネスのサイズ(売上高)と比較して大量の資金が必要になり、財務レバレッジを掛けざるを得ないという訳です。

ディーアの自己資本比率は現在改善傾向ですが、今後悪くなるようであれば注意が必要です。

キャッシュフローについて、営業キャッシュフローが大きなプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローが小さなマイナスです。フリーキャッシュフロー(営業ー投資キャッシュフロー)が大きく、確り収益を生んでいる企業だと分かります。

上記を纏めると、ディーアの安全性は普通レベルと言えます。

 

ディーアは割安か?(割安度)

ディーアが割安かどうかを判断する為に、PER(株価収益率)という割安度を示す指標を中心に各種分析をしてみましょう。

 

ディーアの株価(パフォーマンス)

既述の通り、ディーアの収益性も成長性も高かったので、人気が集まって株価が高い筈です。実際にはどうでしょうか?


(出典:yahoo!finance

上記は5年間の株価チャートです。

予想通りディーア(青線)が競合に差を付けてぶっちぎりの一位、その後にAGCOとCNHインダストリアル(CNHI)、少し差をつけられてクボタ(6326T)という順番です。

 

ディーアの実力評価(PERと収益性、成長性)

次に割安度を示すPER(株価収益率)という指標が、その銘柄の実力に反して低いのかどうかを見ます。


(参照:yahoo!finance

上記はPERと利益率(収益性)、成長率をプロットしたものです。 グラフの右に行くほど実力が高く、上にいくほど株式市場からの評価が高いことを意味します。青線より左上は割高、右下は割安ということです。

収益性も成長性もディーア(DE)がNo.1です。株価チャートだけを見るとディーアは非常に人気に見えますが、その実力を見ると未だ評価に値するほど株価は高くないということが分かります。

 

ディーアの株価(割安度)の推移


(出典:macrtrends

上記はディーアのPER(一番下のグラフ)です。急にPERが上がると今は割高、逆に急に下がると割安ということが分かります。

ディーアのPERは年々上がっていますが、直近ではギュンと下がって20.24倍です。ディーアの今の株価は割安と判断できるでしょう。  

 

ディーアの理論株価

ディーアの理論株価を超ざっくり計算してみましょう。

先に結論を述べると、理論株価は755.66ドル、2021年11月24日の株価は349.28ドルと理論株価の2分の1くらいで、今の株価は割安だと言えます。

さて、理論株価の計算方法ですが、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を用いて計算しました。

本来は過去の財務諸表から、将来の財務諸表を厳密に計算しますが、ここでは

・今後10年分のフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを除いたもの)は、過去5年分のフリーキャッシュフロー(参照:reuters)から予想値をざっくり設定
・リスクフリーレート(リスク0の投資先の利回り)は米国10年国債(参照:marketwatch
・ベータ(個別の株式のリスク)は株式市場で一般に公開されているデータ(参照:yahoo!finance
・マーケットリスクプライム(投資家が株式に期待するリターン)はS&P 500の過去10年のリターンの平均値(参照:macrotrends
・有利子負債資本コスト(企業が借りている借金の金利)やD/Eレシオ(負債と資本金の比率)は最新の決算書を参照
・永久成長率はアメリカの物価上昇率を参照(参照:TRADING ECONOMICS
・必要手許現預金は月商2か月分
・保有している固定資産(設備等)の20%は余剰投資資産と想定

という前提でざっくり計算しました。計算結果は下記の通りです。

  

 

結局ディーアの株価は割安なのか?

上記の分析結果を見ると、ディーアの株は結構良いパフォーマンスに見えますが、理論株価はまだもっと上という計算結果です。

基本的には市場が正しいと仮定して、何故理論株価と乖離があるのかを考察してみます。

先ず農業機械業界自体、投資家から注目されていない可能性は高いです。詳細は割愛しますが、例えばAmazonの理論株価は現在の株価の2倍くらいで、非常に割高です。eコマースは非常に注目の的である一方、農業機械はやっぱり地味ですし、特に個人投資家から注目を集める業界では無いでしょう。

中国メーカーの脅威が大きいことも懸念材料でしょう。こう言っては悪いですが、安かろう悪かろうでも、まかり通る分野ではあります。所詮土を耕すだけのシンプルな作業の機械です、日本は兎も角、海外では「中国製の機械でも安いならいっか」と農家の方が判断する場面は容易に想像できます。しかも、中国の製造技術は飛躍的に進化しており、最早品質の差も無くなってきていると言っても過言ではありません。

あと、ディーアの場合はフリーキャッシュフローが過去5年間安定していないので、今後も安定的にキャッシュを生み出すことが出来るのか、投資家が不安視している可能性もあります。

理論株価より現在の株価が安い理由はいくらでも考えられますが、どれも「なんとなく不安、なんとなく今の株価が限界」という程度で、明確な答えは分かりませんでした。

個人的には、上記分析の通りディーアの潜在能力は非常に高く、今後じわじわと真の実力が評価されて、時間が掛かっても確実に株価が上がっていくのではないかと思っています。

 

ディーアは配当を出しているか(配当)


(出典:macrotrends

ディーアは上記の通り配当を出しており、最新の利回りは1.03%と、高配当とは言えませんが、悪い数字ではありません。

上記の通り長年増配を続けており、株主としては配当金という目に見える具体的なリターンが期待でき、魅力的な株だと言えます。  

 

ディーアの総評

以下は私個人が行った銘柄評価で、特定の企業や従業員、株主を攻撃するはありません。又、各銘柄について絶対的に正しい評価を議論するものでも無い為、私個人の銘柄評価に対する非難や誹謗中傷、嫌がらせはお止め下さい。

さて、しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、ディーアの総合評価は83点です。 

農業機械は中国メーカーの脅威がありますが、ディーアは今好調ですし、収益性も高くて超優等生です、おまけに株価は高く見えて、まだまだ上がるチャンスがありそうです。

上記より、ディーアに投資するかどうか、「少額なら投資する」というのが私個人の判断です。 今まで分析した企業の中でもトップクラスに実力が高く魅力的な銘柄だと思っていますが、ディーアは時価総額が大きすぎるので、「少額なら投資する」としつつ、私は他にテンバガー候補を探したいです。

以上、「農業機械業界のエリート、ディーアに投資すれば間違い無し!?DE(米国株)の銘柄分析」でした。

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