(参照:Bloomberg)
今回はエリクソン(NASDAQ: ERIC)の株情報です。
またまた知らない企業になるかもしれません。エリクソンはスウェーデンの通信機器メーカーです。上場しているのは Nasdaq Nordicという北欧の市場ですが、ADR(米国預託証券)なのでNASDAQで買えます。
さて、エリクソンの何がすごいのかと言うと、5G通信機器(5Gアンテナ)で世界2位のシェアを誇ります。携帯端末が高かったり、まだ5Gの普及が進んでいませんが、だからこそ今がチャンスかもしれません。
この銘柄、私も持っているのですが、先日の決算がアナリスト予想より低かったので株価がめちゃくちゃ落ちました。ファンダメンタルが正しかったのか気になったので、今回(8月23日)ブログ記事を更新して見直しを行いました。
では銘柄分析していきたいと思います!
目次
エリクソンの企業概要、事業内容
公式HPより、エリクソンの歴史が始まったのは1876年です。電信機器の修理をする工務店としてスタートしました。
事業内容としては通信機器が主力です。他には通信事業者向けデジタルサービス、AIの活用等のソリューションを提案しています。
事業内容は5G通信を中心としたもので、事業内容はシンプルで投資家にとって事業多角化のリスクは少ない銘柄だと言えます。
5G通信の市場規模(社会需要)
(参照:statista)
上記は5Gの普及度合いを示します。既にアジア(恐らく中国)の5G採用が進んでいますが、今後米国も含めて先進国の普及が進んでいくという予想です。
個人的な肌感覚ですが、モバイルのデータ消費量がハンパ無いので、5Gのニーズは非常に強いと感じます。
5Gの業界構造(競争要因、参入障壁)
5G通信業界について5フォース分析をしてみましょう。
(出典:Korea Herald)
先ず直接の競合は他の機器メーカーでしょう。上記は機器メーカーのシェアです。トップはフアウェイで、2番手がエリクソンです。5Gアンテナはそこまで特殊な機器では無い筈ですが、世界で主要なメーカーは5社しかおらず、競合間の競争はそこまで激しく無いと言えます。
次は顧客との力関係です。顧客は5G発信局を所有する通信業者になりますね。日本国内なら楽天を含めて4社、アメリカも4社(参照:statista)といった具合に、通信業者の数はそこまで多くありません。通信業者1社との契約を巡って、メーカー同士での戦いはあるので、エリクソンの顧客に対する交渉力は並と言ったところでしょうか。
仕入先との力関係はどうでしょうか。エリクソンの仕入れ先は、5Gアンテナを作る基板や電源装置等の部材メーカーです。エリクソンは仕入れ業者1社単独は避けるようにはしており、極力複数の仕入れ先に分散させるようにしています。仕入先に対するエリクソンの交渉力は普通のレベルでしょう。
代替商品の脅威について、パッと思いつくのは無線LANですね。外出した際、wifiしか使わない、5Gには繋がないという方法も無いわけではありません。今は5Gですが、通信規格は結構なスピードでコロコロ変わっているので、6Gもすぐに出てきそうです。代替案は幾つかありそうですね。
新規参入者について、通信機器メーカーがどんどん業界に参入しているという話しはあまり聞きません。バイオ技術やITに比べて、後から参入しても旨味が無いのかもしれませんね。製造を自社で行う場合は設備が必要ですし、工場の人員の確保、部材調達の為の資金も必要です。従って、新規参入はある程度限定され、参入障壁もやや高いと言えます。
エリクソンの強み(商品力)
エリクソンの強みは5G機器に特化した集中力です。
5G機器だけに特化した企業はそうありません。普通は1つの製品に限定してしまうと、Payしない、つまり儲けが少なくて企業を存続できないからです。
その点、エリクソンは思い切って5G機器だけに注力しています。その分、研究開発も5G技術だけに集中させることが出来るので、特許の取得や新技術の開発等、常に競合の一歩先を行くことが出来ます。
5G機器だけに注力しているので、世界中のシェアを狙っており、日本を含め各国に法人があります。
エリクソンの決算内容
エリクソンの決算内容を一言で表すと「5G需要で成績(純利益)は上々、作られた血液は全て筋トレ(投資)と献血(借金返済)に回して、ストイックに上を目指す」と言った感じでしょうか。
ポイント1
損益計算書では、営業利益が大幅に伸びていることに注目です。エリクソンではサービスより機器の方が利益率が高いのですが、2020年は特に機器の販売が売上に占める割合が大きかった為に、粗利率が大きく伸びました。2019年はアメリカでの罰金(贈収賄に関するもの)がありましたが、2020年はそれが無かったのも、営業利益が大きく伸びた要因です。
ポイント2
賃借対照表では、純資産が増えていることに注目です。純利益=利益余剰金が確り蓄えられて、微増ですが資本金が増えています。加えて長期借入金が減って負債が減っているので、財務体質が良くなっていますね。
資産総額が増加していないので、企業のスケールは殆ど変わっておらず、成長したとは言えませんが、その内容はかなり良いです。
ポイント3
キャッシュフロー計算書で注目すべきは営業キャッシュフローの増加です。純利益が前期比で増えていることも要因ですが、エリクソンは設備が多いので減価償却費が大きく、実際に手元に入ってきているキャッシュは損益計算書の見かけ(純利益)よりも大きくなります。
投資(企業の買収)や財務でがっつりキャッシュを使っているので、かなり攻めの資金繰りですね。現状に甘んじていない印象があり、非常に好感を持てます。
財務諸表
(出典:エリクソン年次報告書)
エリクソンは今後大きくなるか?(成長性)
2020年は増収増益となりました。営業利益のみならず、純利益も大きく伸びています。
最新の業績ですが、2021年第3四半期は売上が前期比微減の563億クローナ、純利益は4%増の58億クローナでした(参照:エリクソン2021年第3四半期報告)。第2四半期に続き、今期も中国での売上が落ちた他、仕入先等の調達網の影響がありましたが、知的財産権使用料や買収したCradlepointの事業(ワイヤレスネットワーク機器)の収益が改善されて、利益率が向上しています。
(参照:Reuters)
上記は2021年の業績予想です。2021年も増収増益の予想となっていますが、直近の業績を見れば、この予想も達成できそうです。
次に賃借対照表より、資産の増加度合いから成長性を評価します。2020年は資産総額が微減です。賃借対照表の観点では、大きな成長は見られませんでした。
上記を纏めると、やや頭打ち感はあるものの、業績は大幅に回復して成長していると言えます。
エリクソンは儲かっているか?(収益性)
エリクソンの収益性をチェックしていきましょう。
先ず売上高純利益率を計算します。損益計算書より、2020年の売上高純利益=7.5%です。エリクソンが含まれるであろう「通信機器業界」において、利益率平均は2~4%(参照:CSI Market)なので、エリクソンの利益率は平均より高いです。
次にROA(総資産利益率)をチェックすると、純利益÷総資産=6.5%でした。業界平均は1~3%(参照:CSI Market)なので、こちらも平均を超えています。
ROE(自己資本利益率)=純利益÷純資産=21%ですが、業界平均は3~9%なので、これも平均を大きく超えています。
上記を纏めると、エリクソンの収益性は非常に高いと言えます。
エリクソンは倒産しないか?(安全性)
最後にエリクソンの安全性の評価です。
賃借対照表より、短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率=流動資産÷流動負債=131%で、100%を上回っています。
自己資本比率=純資産÷資産総額=31%と、下限の30%を上回っており、一先ず安心というところです。
次にキャッシュフロー計算書から見る安全性ですが、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローもマイナスで、キャッシュをほぼ全て使い切る攻めの資金繰りです。ちょっと使い過ぎと感じますが、資金繰りは非常に良い内容です。
上記を纏めると、エリクソンの安全性は高いと言えます。
エリクソンは割安か?(割安度)
エリクソンの株価が安いのか高いのかを判断する為に、PER(株価収益率)という割安度を示す指標を中心に、様々な分析をしていきます。
エリクソンの株価パフォーマンスは?
上記の通り、エリクソンの収益性は高い、成長性はまずまずの内容でした。であれば株価は結構パフォーマンスが高そうですが、実際はどうでしょうか?
(参照:Yahoo!Finance)
上記はエリクソンの株価チャートです(赤線)。競合4社と比較するとパフォーマンスは2番手くらいで、飛び抜けて良いという訳ではありません。
因みにS&P 500と比較すると(水色)、なんとエリクソンの方がパフォーマンスが劣っています。市場全体平均と比べると、投資家にとっては成長性や収益性が劣っていると映り、あまり人気が出なかったということです。
エリクソンの実力に対する評価は妥当か?
では本当にエリクソンの実力は大したことが無いのでしょうか?エリクソンのPERに対して、収益性や成長性が妥当かどうかを見ていきましょう。
(参照:Reuters、Yahoo!Finance)
上記のグラフは、上が予想利益率、下が予想成長率です。株式市場は将来の利益率や成長率が高いほど、その株を買うのでPERが高くなります。一般的に青い線の左上は割高、右下は割安と判断されます。
エリクソン(ERIC)は利益率は高いけど、成長性はイマイチという結果でした。エリクソンの予想PER=13.43は結構低い方ですが、成長率の低さが投資家に嫌われているようで、実力と株価(PER)はだいたい一致しているようです。
エリクソンの株価は今安いか?
(出典:macrotrends)
今の株価が特別安いのか高いのか、長期間PERがどう推移しているのか見ています。上記(一番下のグラフ)の通り、エリクソンは赤字になったり黒字になったりを繰り返しており、黒字の時は大体PER=15くらいになっています。直近ではPERが少し下がっているので、今は少し割安だと言えそうです。
エリクソンの理論株価はいくらか?
最後にエリクソンの理論株価を超ざっくり計算してみましょう。
先に結論を述べると、理論株価は47.52ドル、2021年11月14日の株価は10.99ドルと理論株価の4分の1以下で、今の株価は割安だと言えます。
さて、理論株価の計算方法ですが、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を用います。本来は過去の財務諸表から、将来の財務諸表を厳密に計算しますが、
・今後10年分のフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを除いたもの)は、過去5年分のフリーキャッシュフロー(参照:reuters)から予想値をざっくり設定
・リスクフリーレート(リスク0の投資先の利回り)はスウェーデン10年国債(参照:WORLD GOVERNMENT BONDS)
・ベータ(個別の株式のリスク)はエリクソンの過去の株価変動(参照:yahoo!finance)
・マーケットリスクプライム(投資家が株式に期待するリターン)はOMXストックホルム30の過去5年間の平均値(参照:TRADING ECONOMICS)
・有利子負債資本コスト(企業が借りている借金の金利)やD/Eレシオ(負債と資本金の比率)は最新の決算書を参照
・永久成長率はスウェーデンの物価上昇率を参照(参照:statista)
・必要手許現預金は月商1か月分
・保有している固定資産(設備等)の20%は余剰投資資産と想定
という前提で計算しました。計算結果は下記の通りです。
結局エリクソンの株価は割安なのか?
上記の分析結果を見ると、エリクソンは特に成長性がイマイチだと株式市場が評価しているということになります。
基本的には市場が正しいので、理論株価は何かが間違っていると考察してみます。
エリクソンが確りしたフリーキャッシュフローを出せるようになったのはここ1、2年の話しです。この先も確りキャッシュを生み出せるのか、株式市場は懐疑的になっている可能性があります。
過去にちょいちょい大きな赤字を出しているのも、投資家にとっては印象が悪いでしょう。
上記を纏めると、エリクソンは未だ安定的に売上を上げてがっつり稼げる会社では無い、と株式市場が見ていると考えられます。割安な筈だが、なかなか株価が上がるきっかけが無いということです。
個人的には、今後も確りフリーキャッシュフローを出せれば株式市場の評価は変わりそうな気がしますが、5Gアンテナの導入率がまだまだで売上の伸びが微妙な為、株価が伸びるのは未だ少し先だろうと予想します。
エリクソンの配当金(配当)
(参照:Nadaq)
エリクソンの最新の配当は0.1169ドルです。
配当金は一時期減りましたが、2021年には元のレベルに戻っています。配当金が配れないほど経営が苦しくなったという事態はありませんでしたが、配当金が少し安定しないのは気になるところです。
エリクソンの総合評価
以下は私個人が行った銘柄評価で、特定の企業や従業員、株主を攻撃する目的はありません。又、各銘柄について絶対的に正しい評価を議論するものでも無い為、私個人の銘柄評価に対する非難や誹謗中傷、嫌がらせはお止め下さい。
さて、しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、エリクソンの総合点数は81点です。またまた自分が持っている銘柄だからと高く評価してしまったかと思いましたが、改めて見てもそこまで悪くない銘柄だと思いました。
やや業績の伸びが鈍化しているものの、2021年も業績予想はまずまずですし、5Gアンテナの設置はこれからも進む筈です。
エリクソンに投資すべきかどうか、今は株価も大分落ちているので是非「投資すべき」というのがしーおがが個人の判断です。私の投資判断は間違いじゃなかったと思っているので、辛いですが我慢して持ち続けたいと思います。
以上、エリクソンの銘柄分析でした。
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