(出典:proactive)
さて、今回で「航空機・防衛」関連は最後にしたいと思います。
防衛は兎も角、コロナで旅行需要が減って、航空機製造は相当なダメージを受けた筈です。にも関わらず航空機・防衛関連に注目した理由は、やはりアメリカを代表する産業だからです。 もしかしたらコロナで株が大暴落して、お買い得な株がゴロゴロ転がっていて、投資のチャンスがあるかもしれません。
今回取り上げる銘柄はヴァージン・ギャラクティック(NYSE: SPCE)です。
ツイッターでもちょくちょく話題になる人気の銘柄ですね。宇宙関係は一度は調べてみたいと思っていたので、私も分析するのが楽しみでワクワクしています。
その実力はどんなもんでしょうか? ではさっそくいってみましょう!
目次
- 1 ヴァージン・ギャラクティックの企業概要、事業内容
- 2 宇宙産業の外部環境(外部環境)
- 3 宇宙旅行の需要(市場)
- 4 宇宙旅行の業界構造(業界構造)
- 5 競合の強さと市場シェア(競合)
- 6 経営資源の強さ(経営資源)
- 7 適切な経営戦略(経営戦略)
- 8 ヴァージン・ギャラクティックの決算内容
- 9 ヴァージン・ギャラクティックの利幅は大きいか?(収益性)
- 10 ヴァージン・ギャラクティックは効率的にお金を回しているか?(効率性)
- 11 ヴァージン・ギャラクティックは今後大きくなるか?(成長性)
- 12 ヴァージン・ギャラクティックは倒産しないか?(安全性)
- 13 ヴァージン・ギャラクティックは配当を出しているか(配当)
- 14 ヴァージン・ギャラクティックは割安か?(割安度)
- 15 ヴァージン・ギャラクティックの総評
ヴァージン・ギャラクティックの企業概要、事業内容
(出典:THE CONVERSATION)
既に知っている人も多いと思いますが、ヴァージン・ギャラクティックは宇宙旅行を提供する会社です。ロマン、夢に溢れた企業ですね。
ヴァージン・ギャラクティックの創業は2017年で、Richard Branson氏によって創設されました。社名のヴァージンは、Richard Branson氏が会長を務める「ヴァージン・グループ」から来ています。「ヴァージン・グループ」の企業で有名なのは「ヴァージン・アトランティック航空」でしょう。Richard Branson氏は数々の企業を生み出した、凄腕の起業家です。
ヴァージン・ギャラクティックの事業内容は、個人及び研究者向けへの宇宙旅行の提供です。宇宙旅行の提供の為に、ヴァージン・ギャラクティックは自身で宇宙船を設計しており、知的財産として保有、若しくは商用の宇宙船開発の為にリースしています。
宇宙産業の外部環境(外部環境)
ヴァージン・ギャラクティックに関する深い分析の前に、宇宙産業を取り巻く外部環境をざっくり分析します。
いくらヴァージン・ギャラクティックが優秀な企業でも、宇宙産業が厳しい外部環境に曝されていると、今後の成長が難しくなってしまうからです。
政治:政府と宇宙産業の関係性を強化、気候問題に対する宇宙産業の貢献を期待
経済:コロナにも関わらず業界規模は2020年に拡大
社会:前澤氏を筆頭に、民間人の宇宙航行への参加が増加
技術:火星でのヘリコプター探索、イオンスラスター、AI、5G等
上記を纏めると、アメリカに限った話しではありますが、コロナ禍でも宇宙産業は止まらず寧ろ加速している印象です。日本人にとっても民間人が宇宙に行く時代になった印象が強い筈です。衛星以外で収益化できるのかは微妙ですが、何れにしてもお金・人・モノが継続して流れ込んでいる業界であり、成長のきっかけとなる機会が多いように見受けられます。
宇宙旅行の需要(市場)
(出典:statista)
宇宙旅行の市場規模は小さすぎてデータがありませんでしたので、代わりに上記の宇宙に行った人数を参照下さい。
1980~90年代は人数が非常に多いですが、この時はいわゆるアメリカとソ連の宇宙開発競争の時ですね。
その後、ずーっと人数が低迷していましたが、2020年に再び少し人数が増加しています。
今後の宇宙旅行市場の成長率は15.2%と予想されています(参照:businesswire)。民間宇宙産業の成長率が2020年は6.6%だったので(参照:SPACE FOUNDATION)、上記の数値はかなり強気で、やや現実味に欠けます。ヴァージン・ギャラクティック以外の宇宙旅行会社が赤字でもバンバン宇宙旅行を提供すれば、年10%くらいの成長率には到達するかもしれません。
宇宙旅行の業界構造(業界構造)
宇宙旅行業界について5フォース分析をしてみましょう。
宇宙旅行を提供している会社は、ヴァージン・ギャラクティックを含めて5社です。まだ市場として成り立っていないので、企業の数はこんなもんでしょう、5社だと寧ろ多いかもしれません。
顧客との力関係ですが、宇宙行きのチケットを公示、価格を明示しているのはヴァージン・ギャラクティックだけです。前澤氏は確かにお金を持っているというだけで宇宙に行くことができましたが、まだまだ宇宙行きの門は非常に狭い、顧客が宇宙旅行会社を選べる立場では無いと分かります。
仕入先との力関係ですが、宇宙船の推進系に使う亜酸化窒素やバルブ等、一部の燃料や部品は特定の調達先に限定され、仕入先をそう簡単に変えられないケースもあるので、ヴァージン・ギャラクティックの仕入先に対する交渉力は並だと言えます。
代替品の脅威ですが、ロケットや宇宙船以外で、人類が宇宙に行く方法はありません。
新規参入について、ジェフベゾスがブルーオリジンを創業したのは記憶に新しいですね。今はまだ市場規模が小さいですが、今後成長するようであれば新規参入は多そうです。
上記を纏めると、宇宙旅行業界の競争はそこまで激しくないように見えます。 そもそも未だ収益化が全く見えていない、将来性未知数の業界です。参入したいプレイヤーはいるとは思いますが、未だ様子見といったところでしょう。
競合の強さと市場シェア(競合)
競合の強さですが、継続的に宇宙旅行を実施して収益を上げている企業は未だいないみたいです。
(出典:FOX BUSINESS)
宇宙旅行会社として、最大の競合はブルーオリジンでしょう。試算ではヴァージン・ギャラクティックの方がチケットの総売上は上ですが、ブルーオリジンも1億ドルは既に販売したそうです(参照:CNBC)。
宇宙旅行業界ではヴァージン・ギャラクティックがリードしていますが、今後継続的に宇宙旅行が実現可能になれば、業界の勢力図は大きく変わる可能性があり、ヴァージン・ギャラクティックは油断できないと思います。
経営資源の強さ(経営資源)
(出典:virgin galactic)
ヴァージン・ギャラクティックの経営資源が優れているのか、ざっくり分析してみましょう。
人的資本:宇宙旅行を実現するという熱意に溢れる、専門性高い従業員823人を抱える
物的資本:20万平方フィートに及ぶ広大な敷地、製造拠点をカリフォルニアに構える
財務資本:キャッシュリッチで、投資や支払いにも直ぐに対応できる体制
組織資本:初の宇宙旅行会社として組織が一丸となって目標に向かう
超大企業と比べるとヴァージン・ギャラクティックの規模は小さいですが、非常にシンプルで明確な目標に全社員が心血を注いでいるように感じられます。
宇宙産業にとっては今後は機会が多い筈ですが、ヴァージン・ギャラクティックであれば、宇宙旅行実現に経営資源を集中させ、成功のきっかけを掴めると思っています。
適切な経営戦略(経営戦略)
ヴァージン・ギャラクティックの経営戦略が上手くマッチして市場シェアの獲得に繋がっているかを分析してみましょう。
ヴァージン・ギャラクティックが参入している宇宙旅行業界は、現在は殆どプレイヤーがいませんし、宇宙旅行の実現が難しいので、そもそも業界として成り立っていません。なので、現時点で競合と市場シェアを争うような状態ではないですし、明確な競争戦略も不要です。
今後、宇宙旅行産業が発展した後に、パイオニアであるヴァージン・ギャラクティックがどんなポジションを確立しているか、楽しみにしたいと思います。航空機のような、再利用が出来る宇宙船を開発していることから、費用を抑えて宇宙旅行を楽しめる、コスト・リーダーシップ戦略が取れるのではと思っています。
ヴァージン・ギャラクティックの決算内容
ヴァージン・ギャラクティックの決算内容(2020年年次報告書)を一言で表すと「米国政府向け技術サービス等が減って運動量(売上)減、無駄な動き(費用)は増えて運動成績(純損失)は大幅に増えて余裕の落第点。血液(キャッシュ)を生み出す力が無く、筋トレ(投資キャッシュフロー)も少しして血液が足りないので、株式市場から大量輸血(財務キャッシュフローのプラス)の一命を取り留める」という感じです。
ヴァージン・ギャラクティックの財務諸表は典型的なベンチャー企業の内容です。まだまだ黒字化は遠く、株式市場からの資金調達で繋いでいる状況です。
ヴァージン・ギャラクティックの株が人気なんでしょう、株式市場からがっつり資金調達できるのは良い状態です。投資家から人気があるうちに、早く黒字化を達成したいところです。
ヴァージン・ギャラクティックの利幅は大きいか?(収益性)
ヴァージン・ギャラクティックは赤字企業なので、収益はまだ出ていません。
収益が高いか低いかで言えば、非常に低い状態です。
ヴァージン・ギャラクティックは効率的にお金を回しているか?(効率性)
ヴァージン・ギャラクティックがお金を効率的に回して儲かっているかを調べてみましょう。
効率性は総資産回転率という指標で見ます。財務諸表より、2019年、2020年の総資産回転率はほぼ0でした。
売上がかなり小さい割に、設備等で資産が大きい為、回転率がほぼ0になっています。
参考迄、航空・防衛関連業界の総資産回転率は0.62~0.67です(参考:csi market)。S&P 500の総資産回転率の平均は0.26となっています(参考:csi market)。
上記より、ヴァージン・ギャラクティックの効率性は低いです。
ヴァージン・ギャラクティックは今後大きくなるか?(成長性)
ではヴァージン・ギャラクティックの成長性を評価していきましょう。
(出典:macrotrends)
先ず今までの成長率を見て見ましょう。
上記はヴァージン・ギャラクティックの売上(上)とEPS(下)です。EPSとは一株当たり純利益のことで、最後に残った利益がどれくらい大きいかが分かります。
売上0の時が多く、まだ安定的しません。EPSはほぼ全期間でマイナスです。
(出典:Yahoo!finance)
上記はヴァージン・ギャラクティックの売上(上)とEPS(下)予想です。
2021年は売上が1,231%増加、但しEPSはマイナスが大きくなっています。3Qに大きな売上が立ったので、上記売上予想は既に到達しています。
2022年は売上が倍増する予想です。1Qで3Mくらいの売上が上がることがあるので、8.63Mは実現可能な数字でしょう。
直接の競合ではありませんが、航空・防衛関連の企業と比較すると、ボーイングの2022年予想売上高成長率が33.40%、ロッキードが-1.10%、ノースロップが2.70%、レイセオンが4%(参照:yahoo!finance)なので、単純比較すればヴァージン・ギャラクティックの成長率は高いです。
但し、ヴァージン・ギャラクティックの売上は元々小さかったので、少しでも売上が大きくなれば成長率が高くなることに注意して下さい。
とは言いながら一応上記を纏めると、ヴァージン・ギャラクティックの成長性は高いと言えます。
ヴァージン・ギャラクティックは倒産しないか?(安全性)
ヴァージン・ギャラクティックが倒産する心配の無い会社か、安全性をチェックします。
短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率という指標は、2019年が4.60、2020年が6.32でした。基準となる1.00を大幅に上回っており問題無いです。
資本金が占める割合を示す自己資本比率を見ると、2019年は56%、2020年は65%と、目安である30%を大幅に上回っており、こちらも問題無いです。
キャッシュフローについて、2020年は営業キャッシュフローがマイナス、投資キャッシュフローが小さなマイナス、財務キャッシュフローが大きなプラスです。ベンチャー企業によく見られる、まだまだ収益化が遠い企業の典型的な資金繰りです。
上記を纏めると、ヴァージン・ギャラクティックの安全性は高いです。
ヴァージン・ギャラクティックは配当を出しているか(配当)
ヴァージン・ギャラクティックは配当を出していません。未だ黒字化が遠い企業であれば当然でしょう。
配当が出ている企業と単純比較すれば、目に見えるリターンが無いのでヴァージン・ギャラクティックの魅力度は下がります。
ヴァージン・ギャラクティックは割安か?(割安度)
ヴァージン・ギャラクティックが割安かどうかを判断する為に、PER(株価収益率)という割安度を示す指標を中心に各種分析をしてみましょう。
ヴァージン・ギャラクティックの株価(パフォーマンス)
既述の通り、ヴァージン・ギャラクティックは収益が出ていませんが成長性は高かったので、ちょっと株価(パフォーマンス)の予想が難しいですが、実際にはどうでしょうか?
(出典:yahoo!finance)
上記は5年間の株価チャートです。 ヴァージン・ギャラクティック(黒線)は一時はかなり株価が上がったのですが、現在は下がってS&P 500(ピンク線)も下回り、5年間のリターンは37%です。
上記パフォーマンスは市場平均と比べると寂しい数字ですが、それでも競合他社よりはリターンが上です。
ヴァージン・ギャラクティックの実力評価(PERと収益性、成長性)
ヴァージン・ギャラクティックは赤字企業なのに、他の黒字企業を上回るリターンでした。本当に株価に見合うだけの実力があるんでしょうか。
検証するためには割安度を示すPER(株価収益率)、予想収益率、予想成長率を使いますが、ヴァージン・ギャラクティックは赤字企業なのでPERがマイナスです。
なので他の黒字企業との比較分析が出来ないですね。株価が高すぎるのは間違いありません。
ヴァージン・ギャラクティックの株価(割安度)の推移
通常はPERが時系列でどう変化しているか、競合と比較して高いか低いかを分析しますが、ヴァージン・ギャラクティックの場合はPERがずっとマイナスなので、分析のしようがありません。
PERがずーっとマイナスなので、ずーっと割高状態であるとは言えます。
ヴァージン・ギャラクティックの理論株価
通常は理論株価を計算して、現在の株価と比較しますが、ヴァージン・ギャラクティックはキャッシュを生み出していないのでDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法で理論株価の計算ができません。
理論株価が計算不能なので、現在株価より理論株価が低いことは間違いないでしょう。
結局ヴァージン・ギャラクティックは割安か、今後株価は上がるのか?
上記の分析結果より、ヴァージン・ギャラクティックは赤字企業で割高だと言えます。
では、何故現在は株価がついているのか、今後理論株価に収束して株価が下落するのかを考えてみましょう。
現実的に、いくら業績が低くても株価が0になることは、経営破綻した会社以外はあり得ないことです。業績と株価が必ずしも理論的に正しく連動することは無いということですね。
宇宙旅行という、今後生まれるであろう市場に投資家が大きな期待を寄せている可能性もあります。実際、15%ものスピードで市場が成長すると予想している人もいます。
ヴァージン・ギャラクティックの成長スピードが凄まじいことも要因でしょう。今後も現在の成長率で伸びて、将来は大化けすると見込んで、期待感が株価に織り込まれている可能性があります。
上記より、ヴァージン・ギャラクティックへの期待感はフワッとしたもので実現性が不明であり、現在の株価が見直されて下落する可能性は低いものの、一方で黒字化が何時になるのか分からない為、株価上昇のタイミングも不明だと言えます。少なくとも2、3年での黒字化はほぼ不可能でしょう。
ヴァージン・ギャラクティックの総評
以下は純粋に株式投資判断の為だけに私個人が独断で行った銘柄評価であり、特定の企業や従業員、株主を応援したり、逆に攻撃する意図もありません。下記に対して非難や誹謗中傷、嫌がらせは止めて下さい。
さて、しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、ヴァージン・ギャラクティックの総合評価は55点です。
宇宙旅行のパイオニアであり、宇宙行きチケットを販売している唯一の企業であるヴァージン・ギャラクティックは、社名の通り夢と希望が詰まった会社だと思います。現時点では株式市場から資金調達が出来るので、財務体質もそんなに悪くはありません。只、売上が小さすぎるので、収益化が具体的に何時になるのかは見えないです。
上記より、ヴァージン・ギャラクティックの株は「売り」というのが私個人の投資判断です。
何時か大爆発するのを待ってヴァージン・ギャラクティックの株を持つのもアリですが、であれば債券等のリスクフリー資産で運用して確実にリターンを得る方が正しい投資判断でしょう。
以上、「ヴァージン・ギャラクティックの株を買って宇宙旅行ブームのチャンスを掴め!SPCEの銘柄分析」でした。
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