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セスナ機で世界を席巻!テキストロン(TXT)の銘柄分析


(出典:TEXTRON

さて、前回に引き続き今回も「航空機・防衛」関連の銘柄を紹介したいと思います。

防衛は兎も角、コロナで旅行需要が減って、航空機製造は相当なダメージを受けた筈です。にも関わらず航空機・防衛関連に注目した理由は、やはりアメリカを代表する産業だからです。 もしかしたらコロナで株が大暴落して、お買い得な株がゴロゴロ転がっていて、投資のチャンスがあるかもしれません。

今回取り上げる銘柄はテキストロン(NYSE: TXT)です。ボーイングと比較すると知名度が低いですが、S&P 500(アメリカの大企業500社)にも選ばれている超優良企業です。

その実力はどんなもんでしょうか? ではさっそくいってみましょう!  

 

テキストロンの企業概要、事業内容


(出典:TEXTRON

テキストロンはその社名の通り、テキスタイル(繊維業)から始まった会社です。Royal Little氏が1923年にボストン(アメリカ東部)で会社を設立しました。

創業後、繊維業が傾いてきたときに様々な別の事業を買収して、テキストロンはコングロマリットに変貌を遂げます。

テキストロンが本格的に航空機の製造を始めたのは1992年、セスナ航空機の買収です。「セスナ機」とかよく聞きますよね、あのセスナです。

2021年12月今日、ヘリコプター、小型航空機、カートやバギー車、戦車等、コングロマリットらしく様々な乗り物を製造しています。各事業で売上のバランスが取れていますが、一番の主力はやはり航空機です。

 

小型航空機の外部環境(外部環境)

テキストロンに関する深い分析の前に、小型航空機業界を取り巻く外部環境をざっくり分析します。

いくらテキストロンが優秀な企業でも、小型航空機業界が厳しい外部環境に曝されていると、今後の成長が難しくなってしまうからです。

政治:空港近くの地域において騒音削減の要望等
経済:コロナにより民間企業は大打撃、予算激減
社会:コロナにより外出、海外への渡航が制限
技術:SAF(代替燃料)、水素燃料、複合ビジョンシステム等

上記を纏めると、コロナや脱炭素に関連する脅威が強く、航空機業界を取り巻く外部環境は非常に厳しいです。先ずは旅行者等の需要が早く回復して欲しいところです。

 

航空機の需要(市場)


(出典:AEROWEB

上記はゼネラル・アビエーション(小型航空機等)の売上です。

2008年くらいから市場成長は頭打ちで、その後は上下変動がありながらも一定レベルを推移しています。

今後の推移ですが、現在ある小型機の航行ルートで需要はカバーしているので、今後新たに小型機が必要となる展開は難しいです。インフレの分くらいは市場規模が少しづつ大きくなるか、販売台数はほぼ一定、もしかしたら微減くらいでしょう。

 

航空機の業界構造(業界構造)

航空機業界について5フォース分析をしてみましょう。

小型機になるとメーカーの数はぐんと増えて、エアバスやボーイング、ボンバルディアやダッソー、日本ならホンダや三菱重工等、10社以上はありそうです。

顧客との力関係ですが、小型機になると選択肢はかなり増えるので、顧客は「A社の小型機が高いならB社」という具合に、交渉力が強そうです。

仕入先との力関係ですが、タービンや航空機内部の装置、部品等、テキストロンが調達する物品の数は多いです。モノによっては供給先が限定されている可能性があり、仕入先業者をそう簡単に変えられないケースもあるので、テキストロンの仕入先に対する交渉力は並だと言えそうです。

代替品の脅威ですが、ヘリコプター、最近ではドローン、空飛ぶ車等、幾つか選択肢はあります。小型機で行ける距離なら、船で移動することも不可能ではありません。

新規参入について、ホンダジェットが発売開始されたのは記憶に新しいですね。小型機となると、航空機専業で無くても参入は難しくないので、今後も別のメーカーが参入してくるかもしれません。

上記を纏めると、小型航空機業界の競争は少し厳しいように見えます。

マーケット(顧客)が小さい割にメーカーの数が多くてツライですね。予算を確り確保できる航空会社と異なり、小型航空機の顧客は観光業や個人等で、顧客のお財布事情がかなり厳しいので、価格競争も激しそうです。

 

競合の強さと市場シェア(競合)


(出典:AEROWEB

上記は小型航空機メーカーの売上ランキングです。

トップはゼネラル・ダイナミクス傘下のガルフストリーム、2位はボンバルディア、3位がテキストロンです。

世界のセスナ機を有するテキストロンでさえ3番手です、小型航空機は競合各社がしのぎを削ってシェア奪還に燃えています。

 

経営資源の強さ(経営資源)


(出典:TEXTRON

テキストロンの経営資源が優れているのか、ざっくり分析してみましょう。

人的資本:従業員数3万3千人を25カ国以上に展開
物的資本:世界各地に49の製造拠点、合計54の製造拠点を保有
財務資本:比較的小規模な資産を最大限に活かして事業を継続
組織資本:4事業部で夫々の企業が各々のブランドに注力

テキストロンの特徴として印象が強いのはグローバルでしょう。セスナやビーチクラフト、ベル等、世界に誇るブランドを世界各国で製造、販売しているネットワークの広さは注目に値します。

一方、テキストロンが抱えている企業の数もブランドの数も多く、ターゲットとする市場が異なる為、事業間でのシナジーが発揮できているのか、経営資源を事業間で共有して効率を高めることが出来ているのかは疑問が残ります。

 

適切な経営戦略(経営戦略)

テキストロンの経営戦略が上手くマッチして市場シェアの獲得に繋がっているかを分析してみましょう。

テキストロンの事業、取り扱いブランドは幅広いですが、その中でも航空機部門、セスナが取っている戦略は「コスト戦略」と言えそうです。

小型ジェット機のなかでも幾つかクラスがありますが、セスナ・サイテーションは乗客数7~12人のミドルクラスを取り扱っています。


(出典:TEXTRON AVIATION

セスナの長い歴史のなかで、並々ならぬ開発努力によって廉価のモデルを生み出し、市場に投入しては顧客から喜ばれてきました。今日でもそのスピリッツは変わらず、上記画像のサイテーションCJ3+は同クラスで一番お手頃な小型航空機として、市場から高い評価を得ています。

問題はコスト戦略を継続的に展開できるかどうか、テキストロンの他の事業部や他ブランドに展開できるかどうかです。単純に取り扱い製品が増えてしまえば、大量生産でコストを下げるのは難しくなります。かといって他のモデルや他のブランドで別の戦略を展開すると、夫々の戦略に夫々の経営資源を割り当てないといけないので、どうしても限りある企業の力が分散されてしまいます。

テキストロンという一つの企業が、どういった経営戦略で経営資源を発散させずに市場に攻めていくのか、はっきりしない印象です。

 

テキストロンの決算内容

テキストロンの決算内容(2020年年次報告書)を一言で表すと「コロナで小型航空機の売上減、運動成績(純利益)は毎年ズルズル下がって今年も記録更新できず。けどまだまだ血液(キャッシュ)を生み出す力は強く、筋トレ(投資キャッシュフロー)をしても血液は余り余ったうえに輸血迄して貰って備えは万全、コロナで傷ついた経済のなかで耐え抜いていく!」という感じです。

パッと目につくのは損益計算書、売上原価の高さです。2020年はなんと売上の86%が原価で、利益が殆ど残っていません。更に、製造業は売れる製品の数が多くても少なくても、工場を動かし続けるのに一定の費用、固定費が掛かるので、売上が小さくなっても売上原価が比例して減らないという特徴があります。

テキストロンは2020年は売上が微減ですが、元々利益率が高くない上に固定費が多いので、最後に残る利益がガクッと下がってしまっています。

一方、テキストロンの賃借対照表、キャッシュフロー計算書は素晴らしい内容です。特に財務体質が良く、工業セクターにしては珍しく自己資本比率が高く、今まで利益を確り積み上げて資本金を大きくしていることは好印象です。

 

テキストロンの利幅は大きいか?(収益性)

テキストロンの収益性をチェックしていきましょう。


(出典:macrotrends

先ずは資本金に対してどれくらい効率的に収益を上げているかを示す、ROE(自己資本利益率)という指標を見ますが、上記の通りテキストロンのROE(青線)は安定せずかなり上下変動していますが、直近では約13%となっています。

競合と比較すると真ん中くらいですね。


(出典:macrotrends

次に、ROEと似ていますがより忠実にお金を儲ける力を表す指数、ROA(総資産利益率)を見ると、上記の通りテキストロンのROA(青線)は年々上昇傾向で、現在は5%です。

競合と比較すると、高くも低くもないですね。


(出典:macrotrends

最後に、利益がどれくらい高いのかが分かる指標、売上高営業利益率を見ます。

上記の通りテキストロンの利益率(青線)は近年は一定で安定しており、直近では7%弱です。

競合と比較すると、こちらも真ん中くらいになっています。

因みに、全体平均と収益性を比較してみると、S&P 500の売上高営業利益率は16.24%です(参照:csi market)。工業セクターは利益率が低い傾向で、テキストロンに限らず小型航空機メーカーは軒並み利益率が低めです。

上記を纏めると、テキストロンの収益性は平均的なレベルです。 

 

テキストロンは効率的にお金を回しているか?(効率性)

テキストロンがお金を効率的に回して儲かっているかを調べてみましょう。

効率性は総資産回転率という指標で見ます。財務諸表より、2019年の総資産回転率は0.90、2020年は0.75でした。

総資産回転率が悪化していますが、2020年は効率性が悪くなったというよりは、コロナの影響で売上が落ちた為です。

業界平均と比較してみましょう。航空・防衛関連業界の総資産回転率は0.62~0.67です(参考:csi market)。これと比較すると、テキストロンの効率性は業界平均より高いです。

参考迄、S&P 500の総資産回転率の平均は0.26です(参考:csi market)。これは意外な結果でしたね。テキストロンに限らず、工業セクターは収益性が低い分、売上が大きいので、総資産回転率が高くなっているのかもしれません。

上記より、テキストロンの効率性は平均より上のレベルです。  

 

テキストロンは今後大きくなるか?(成長性)

ではテキストロンの成長性を評価していきましょう。


(出典:macrotrends

先ず今までの成長率を見て見ましょう。上記はテキストロンの売上(上)とEPS(下)です。EPSとは一株当たり純利益のことで、最後に残った利益がどれくらい大きいかが分かります。

2010年には大きく売上、利益が落ち込んでいましたが、それからは回復傾向で基本的には成長率はプラスで推移しています。直近ではやや売上の成長率が下がっているようです。



(出典:Yahoo!fInance

上記はテキストロンの売上(上)とEPS(下)予想です。

2021年は売上がマイナス成長、2022年は7.70%成長する予想です。EPSは2021年が大幅増、2022年は21%の成長予想です。

2021年の予想ですが、1~3Qの実績がかなり良かったので、上記予想は上回る見通しです。

2022年の予想について、テキストロンが成長しているように見えますが、売上もEPSも以前(2018年)の水準には戻っていません。2020年に売上もEPSも大きくへこんだので、現在はそこから回復してきている状況ですが、まだまだ全快とはいきません。

競合と比較すると、ゼネラル・ダイナミクスの2022年予想売上高成長率が4.00%、ボンバルディアが9.40%、エンブラエールが19.00%、ダッソーが-17.20%(参照:yahoo!finance)なので、単純比較すればテキストロンの成長率は平均並みです。

上記を纏めると、テキストロンの成長性は平均レベルでしょう。

 

テキストロンは倒産しないか?(安全性)

テキストロンが倒産する心配の無い会社か、安全性をチェックします。

短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率という指標は、2019年が1.83、2020年が2.26でした。基準となる1.00を大幅に上回っています。

資本金が占める割合を示す自己資本比率を見ると、2019年は36%、2020年は37%と、目安である30%を上回っています。

キャッシュフローについて、2020年は営業キャッシュフローが大きなプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがプラスです。フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足したもの)がプラスで、確り現金を生み出している優良企業だと分かります。

上記を纏めると、テキストロンの安全性は非常に高いです。  

 

テキストロンは配当を出しているか(配当)


(出典:macrotrends

テキストロンは配当を行っており、2021年12月現在は配当利回りが0.11%です。

配当金が非常に小さいのでオマケみたいなものですね。テキストロンは株価の上昇、キャピタルゲインを狙うべきです。

 

テキストロンは割安か?(割安度)

テキストロンが割安かどうかを判断する為に、PER(株価収益率)という割安度を示す指標を中心に各種分析をしてみましょう。  

 

テキストロンの株価(パフォーマンス)

既述の通り、テキストロンは収益性も成長性も平均レベルだったので、株価(パフォーマンス)も平均レベルだと予想できますが、実際にはどうでしょうか?


(出典:yahoo!finance

上記は5年間の株価チャートです。 テキストロン(青線)はS&P 500よりはパフォーマンスが低いものの、競合各社の中では一番パフォーマンスが高かったです。これは意外な結果でしたね。恐らく、コロナ後の業績の回復が投資家から高く評価されているのでしょう。

 

テキストロンの実力評価(PERと収益性、成長性)

本当にテキストロンの株価は実力を正しく反映しているんでしょうか?その点を検証する為に、割安度を示すPER(株価収益率)という指標が、テキストロンの実力通りになっているのかを見て見ましょう。


 (参照:yahoo!finance

上記はPERと利益率(収益性)、成長率をプロットしたものです。

グラフの右に行くほど実力が高く、上にいくほど株式市場からの評価が高いことを意味します。青線より左上は割高、右下は割安ということです。

利益率や成長性を考慮すると、テキストロンの株価は実力通りと言えそうです。先ほどの株価チャートではかなり割高に見えましたが、そうでも無いということですね。

 

テキストロンの株価(割安度)の推移


(出典:macrtrends

上記はテキストロンのPER(一番下のグラフ)です。

急にPERが上がると今は割高、逆に急に下がると割安で買いのチャンスということが分かります。

2019~2020年はPERが下がっていましたが、直近でギュンとPERが上がって、今は21.95倍です。やや割高で、今は株の買いチャンスではありません。 

 

テキストロンの理論株価

テキストロンの理論株価を超ざっくり計算してみましょう。

先に結論を述べると、理論株価は58.02ドル、2021年12月17日現在の株価は74.64ドルと理論株価より少し高く、テキストロンの株はやや割高だと言えます。

さて、理論株価の計算方法ですがDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を用いて計算しました。

本来は過去の財務諸表から、将来の財務諸表を厳密に計算しますが、ここでは

・今後10年分のフリーキャッシュフローは、過去5年分のデータ(参照:reuters)から予想値をざっくり設定
・リスクフリーレート(リスク0の投資先の利回り)は米国10年国債の利回り(参照:marketwatch
・ベータ(個別の株価変動リスク)はテキストロンの過去の株価変動から計算された数値を参照(参照:yahoo!finance
・マーケットリスクプライム(投資家が株式に期待するリターン)はS&P 500(米国大企業500社)の過去10年のリターンの平均値(参照:macrotrends
・有利子負債資本コスト(企業が借りている借金の金利)やD/Eレシオ(負債と資本金の比率)は最新の決算書を参照
・永久成長率は米国の物価上昇率の過去データを参照(参照:trading economics
・必要手許現預金は月商3か月分
・保有しているその他流動資産、その他固定資産等は余剰投資資産と想定

という前提でざっくり計算しました。 計算結果詳細は下記です。

  

 

結局テキストロンは割安か、今後株価は上がるのか?

上記の分析結果を見ると、現在は実力相応、少し割高になっているという内容でした。

誤差の範囲内ではありますが、現在の株価と理論株価の乖離について考察してみます。

先ず既述の通り、テキストロンの業績回復のペースが競合他社と比較して早かったことが、投資家から人気が集まった要因と言えそうです。テキストロンは2020年に純利益がガツーンと落ちましたが、2021年はガツーンと回復しています。

資本金が多く、財務体質が安定しているのも高評価されているのかもしれません。収益性、成長性も卓越した内容では無いですが一定で、安定感が高評価されていると考えます。総じて、競合他社に比べると不安要素が少ないと見ているのでしょう。

上記より、やや割高な状態ではあるものの、将来株価が見直されて理論株価に収束する不安材料は少なく、今後業績の回復に合わせて株価は微増、2022年には79ドルに達すると予想します。

 

テキストロンの総評

以下は純粋に株式投資判断の為だけに私個人が独断で行った銘柄評価であり、特定の企業や従業員、株主を応援したり、逆に攻撃する意図もありません。下記に対して非難や誹謗中傷、嫌がらせは止めて下さい。

さて、しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、テキストロンの総合評価は58点です。

財務体質が非常に素晴らしく、安定性抜群の企業です。直近では業績がアナリスト予想を超えて好印象ですが、今後シェアを拡大して大きく成長する絵が描けないと思っています。

上記より、テキストロの株は「保持→売り」というのが私個人の判断です。未だ株価が少し上がる余地がありますが、2022年の業績回復を見た後、素早く売却するのが賢明でしょう。

以上、「セスナ機で世界を席巻!テキストロン(TXT)の銘柄分析」でした。

 

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