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ユナイテッド・パーセル・サービスへ投資してeコマースの波に乗れ!?UPSの銘柄分析


(出典:WIERD

前回は国際宅急便を行っているフェデックス(NYSE: FDX)の銘柄分析を行いました。

株価下落で今がフェデックスの株を買うチャンス!?FDXの銘柄分析

 

今回はその流れで、業界トップのユナイテッド・パーセル・サービス(NYSE: UPS)の分析をしたいと思います、フェデックス最大の競合ですね。アメリカから通販でモノを買ったことがある人なら必ず知っている企業でしょう、国際発送ではフェデックスよりやや知名度が低い印象ですが、アメリカでは絶対的な地位を築いている超大手です。

ではさっそくいってみましょう!  

 

UPSの企業概要、事業内容(単純事業)


(出典:UPS

UPSはフェデックス同様、国際宅急便を行っている企業です。特にアメリカからの国際宅急便は高い確率でUPSです。

UPSの創業は戦前の1907年です。ニューヨーク証券所に上場したのは1999年で、2002年からS&P 500(アメリカの大型株500社)に入っている歴史を持ちます。

1971年にFrederick Smith氏が創業した老舗企業で、ニューヨーク証券取引所に上場したのは1978年です。S&P 500という厳選されたアメリカ大企業の一つです。

UPSも運送一本の会社で、2021年1月には貨物輸送部門を売却して、コアビジネスである宅急便に注力しています。UPSは投資家にとって事業複雑化、多角化によるリスクが少ない銘柄だと言えます。

 

国際宅急便の需要(社会需要)


(出典:Statista

上記は国際宅急便の市場規模です。2009年から加速度的に市場規模が増加しています。 やはりeコマースの普及が、国際宅急便の成長に大きな影響を及ぼしているのでしょう。国内には無い、海外の企業のDtoCが台頭することも予想されるので、今後も需要が増えると予想できます。

 

国際宅急便の業界構造(競争要因)

国際宅急便業界について5フォース分析をしてみましょう。


(出典:ビジネス+IT

先ず直接の競合は他のクーリエでしょう。上記は国際クーリエのトップ企業の売上ランキングです。1位のDHL、2位のUPS、3位のフェデックスで市場の大半を占めています。上位3社での競争は激しいですが、何十社、何百社という競合と争う他の業界よりはマシな状況でしょう。

顧客との力関係ですが、利用者にとってみればどの会社が荷物を運んでも一緒なので、送料だけを比較してクーリエを選びますので、UPSが明らかに他社よりも高ければ、顧客は簡単に他社に流れてしまいます。

仕入先との力関係ですが、UPSは自社で航空機を所有しているほか、トラック等の陸上輸送機を保有しています。ガソリン等の燃料も大量に消費していますね。運送業は、他の業界に比べてこれらの機械や燃料の購買力が強いので、納めるメーカーにとっては非常に重要な顧客な筈です。

代替品の脅威ですが、先ず自分でモノを運ぶ、つまりスーツケースに海外の現地で買ったものを詰めるケースがありますが、特にコロナ禍では現実的ではありませんし、そう頻繁に海外に行くことは出来ません。運送業はローテクですが、今のところそれに替わる方法は他にあまり無さそうです。

新規参入者について、良さそうなデータを見つけることが出来なかったのですが、海外から商品を取り寄せたりすると、たまに聞いたことのないクーリエが輸送を担当することがあります。各国で第二、第三勢力が出てきているかもしれませんが、結局既述のトップ3を脅かすまでにはならないです。

上記を纏めると、国際宅急便は他の業界よりは競争が激しく無さそうです。ニーズが増えていますが「商品には高いお金を払っても仕方ないが、送料はなるべく抑えたい」というイメージが強く、サービスの料金を上げにくいですし、競合他社との差別化も難しい業界です。従って、如何にコストダウンをするかが重要な業界でしょう。規模の経済が効いてくるので、流通網が広い企業ほど優位性が高いと言えます。  

 

UPSは顧客を独占しているか(独占力)

既述の通り、サービスの差別化が難しいので、全ての顧客を独占するのはほぼ不可能でしょう。

一方で、UPSは世界2位の企業で、既に一定の市場規模は確保しています。今後需要が増えれば、自然に売上も増えそうです。

 

UPSに似た事業を他社が始めるか(参入障壁)


 (出典:UPS

一般論として国際宅急便は膨大な数のドライバーや倉庫の従業員、航空機等の機器、配送センター等の設備、運送事業の許可等が必要で参入障壁は高いです。

一方、言い方は悪いですが、ある場所から別の場所へ荷物を運ぶだけの単純なサービスなので、どんな会社にも真似は出来ます。但し既述の通り、後発で物流網を広げるのがツライ業界なので、よほど「国際宅急便は今後成長しまくるし儲かる!」ということで無い限り、似た事業を他社が新たに始めることは少ないでしょう。

 

UPSの株価と業績に不一致があるか(株価)


(出典:macrotrends

上記のグラフは、一番上から株価、EPS(一株当たり利益。これを業績と考えて頂いて問題無いです)、PER(株価収益率。これが高ければ割高、低ければ割安と分かる指標)の順に並んでいます。

業績はやや安定性に欠けるものの基本は右肩上がり、株価も右肩上がりで連動しています。寧ろ株価の方が業績より上昇していて、株式市場はUPSの業績を過大評価している節があり、あまりお買い得感はありません。

 

UPSは割安か(割安度)


(参照:Yahoo!ファイナンス

上記はUPSの各株価指標ですが、割安かどうかを示す指標であるPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)は、業界平均よりずっと上で高いです(参照:gurufocus)。

従って、UPSの株価は非常に割高と言えます。

 

UPSは配当を出しているか(配当)


(出典:macrotrends

上記は上から順に株価、配当金、配当利回りです。

2001年から増配を続けており、今日の配当は2%弱です。株価がかなり高いですが、かなり増配の努力をしており、資金面に余裕があると期待できます。

 

UPSの決算内容

UPSの決算内容(2020年年次報告書)を一言で表すと、「宅配便の需要が増えて運動量(売上)は増えたけど、体の動きに無駄(人件費)が多かったので、運動成績(純利益)は昨年度の記録を更新できず。利益が蓄積できなくて筋肉や骨(資本金)が細くなった上に、脂肪(負債)が増えちゃって次の健康診断がヤバい」という感じです。  

 

ポイント1


 (出典:2020年年次報告書

損益計算書で注目したいのは営業経費です。2020年はコロナによって宅配便の需要が増加して売上が伸びていますが、それ以上に営業経費が大きくなって、営業利益は前年度より下がっています。

営業経費のなかでも人件費は全体の半分以上を占めます。売上の半分以上が人件費なので、UPSが如何に安くサービスを提案しているか分かりますし、また賃金が大幅に増加しているのが分かります。配送ボリュームが増えて労働時間が増えた他、人員の増加、時給の増加等、全ての側面で費用増加となりました。

売上高営業利益率が低いと、複数の項目がある営業経費のうち1つが少しでも増えてしまうと、上記の通り営業利益が前期比で下がってしまいます。であれば売上を上げたいところですが、競合が送料○○ドルと明確に決めているなかで、UPSだけ送料を上げてしまうと一気にシェアを落として、寧ろ売上が下がってしまうので、八方塞がりで非常に厳しい状況です。 

 

ポイント2


(出典:2020年年次報告書

賃借対照表では純資産に注目です。元々純資産がかなり小さかったですが、今年度は更に減少しています。中身を見ると、利益余剰金がマイナス計上されて減っている上に、累積赤字が増えて計上されていますね。自己資本比率がかなり低くて宜しくありません。

因みに、上記に記載していませんが負債は昨年度より増加しています。特に年金と退職金が増えていますが、これは年金制度の割引率が下がったり、従業員数が増えて、年金制度の費用が増加した為です。賃借対照表でも、人件費増加のしわ寄せで悪影響を受けています。

 

ポイント3


(出典:2020年年次報告書

キャッシュフロー計算書は営業キャッシュフローに注目です。売上の割には純利益が相当寂しい数字ですが、営業キャッシュフローは打って変わって非常に大きいです。

このからくりは、特に減価償却費と年金&退職金によるものです。何れも直ぐに払う費用では無い、すぐにキャッシュが出ていくものでは無いので、本業で受け取るキャッシュを示す、営業キャッシュフローは調整されて大きなプラスになっています。航空機や倉庫等の設備と、従業員が多いUPSならではの数字のマジックです。兎に角、実際に受け取っているキャッシュは多いと認識して貰えればOKです。

因みに全体的なキャッシュフローは、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローはマイナスですが、営業キャッシュフローのプラスで確りカバーできており、期末の現金及び現金同等物残高が少し増えています。

 

UPSは今後大きくなるか?(成長性)

ではUPSの成長性を評価していきましょう。

既述の通り、2020年は増収減益で一歩後退という決算でした。 最新決算(2021年3Q)では前期比で増収増益、EPSが2.65ドルとなりました。売上が増加していますが、特に米国国内は送料単価が増加したことが主な要因です。フェデックスもですが、UPSも送料を上げましたね(参照:WSJ)。これだけ人件費が上がってしまえば、送料に転嫁せざるを得ないでしょう。


(出典:reuters

上記の通り、2021年は増収増益の予想です。かなり強気な予想ですが、今までの結果を見る限りではきっちり上記の数字を達成できそうです。

上記を纏めると、特に今年は大きく業績が伸びる予想で、UPSの成長性は低くないと言えます。

 

UPSは儲かっているか?(収益性)

UPSの収益性をチェックしていきましょう。

利益がどれくらい高いのかが分かる指標、売上高純利益率は1%で、業界平均より低いです(参照:csi market)。

資産をどれくらい効率的に使えたかという指標、ROA(総資産利益率)=2%で、これも業界平均より低いです(参照:csi market)。

ROAと似た指標の、ROE(自己資本利益率)=204%で、これは業界平均を遥かに超えています。但し、UPSが資本を効率的に活用しているという訳では無く、単純に資本金が少なすぎるだけなので、この数字は褒められたものではありません。

上記より、UPSの収益性は低いです。

 

UPSは倒産しないか?(安全性)

最後にUPSの安全性をチェックしましょう。

短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率は118%で、基準となる100%を上回っているので問題無いです。

自己資本比率は1%と、下限の30%を遥かに下回っています。債務超過の寸前で非常に危険です。累積赤字をプラス計上して小さくしたいですね。

キャッシュフローについては既述の通り、営業キャッシュフローの大きなプラスで、投資キャッシュフローや財務キャッシュフローのマイナスをカバーしており、完璧な資金繰りです。

上記を纏めると、UPSの安全性は低いです。  

 

UPSの総評

以下は私個人が行った銘柄評価で、特定の企業や従業員、株主を攻撃する目的はありません。又、各銘柄について絶対的に正しい評価を議論するものでも無い為、私個人の銘柄評価に対する非難や誹謗中傷、嫌がらせはお止め下さい。

さて、しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、UPSの総合評価は65点です。

業績の見通しが明るいですし、最新決算は好調だったので株価も上がっているのでしょう。投資家からあまり人気が無い運送業界において、UPSは株式市場からあまりにも過大評価されていると思います。何より財務体質が悪過ぎです。

UPSに投資するかどうか、「投資しない」というのが私個人の判断です。eコマースの波に乗って、運送業界も上向きと感じている人が多いかもしれませんが、UPSも人件費が課題なので、この先の未来が薔薇色だと考えるのは少し危険だと思います。

以上、「ユナイテッド・パーセル・サービスへ投資してeコマースの波に乗れ!?UPSの銘柄分析」でした。

同じ国際クーリエのフェデックスも分析していますので、是非下記も御覧ください!

株価下落で今がフェデックスの株を買うチャンス!?FDXの銘柄分析

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