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ビップショップ(Vipshop holdings)の英語決算書が5分で分かる!


(出典:Fortune)

前回からeコマース(通販)関連の銘柄を紹介しています。巣籠り需要に投資するのは遅すぎと感じるかもしれませんが、これから投資できる銘柄もありそうですし、コロナで通販が日常生活に定着したので、長期的に成長が期待できるテーマです。

第二回は中国のビップショップ(NYSE: VIPS)を紹介します。恐らく誰も知らない銘柄だと思いますが、eコマース業界において中国企業の勢いは凄まじく、こちらの企業は投資対象として良さそうだったので、今回選んでみました。

では、決算書の内容についてポイントを絞って分かりやすく解説していきます。しっかり銘柄分析してみましょう!

 

ビップショップの企業概要、事業内容(単純事業)

ビップショップ2020年決算書より、ビップショップは中国は広州市に本社を構える、eコマースを行っている各企業を抱える持ち株会社です。社名は漢字で「唯品会」と書きます。

2008年から事業開始した、比較的新しい会社です。ニューヨーク証券取引所に上場したのは2012年になります。

ビップショップの子会社は下記の6社です。
• Vipshop (Jianyang) E-Commerce Co., Ltd., or Vipshop Jianyang;
• Vipshop (Zhaoqing) E-Commerce Co., Ltd., or Vipshop Zhaoqing;
• Vipshop (Tianjin) E-Commerce Co., Ltd. or Vipshop Tianjin;
• Chongqing Vipshop E-Commerce Co., Ltd., or Vipshop Chongqing;
• Guangzhou Pinwei Software Co., Ltd., or Pinwei Software; and
• Vipshop (Zhuhai) E-Commerce Co., Ltd., or Vipshop Zhuhai.

上記より、子会社は何れもeコマースの会社です。因みにソフトウェアの会社が1つだけありますが、ビップショップのスマホ製品やソリューションの研究開発専用の会社だそうです。

事業内容は、vip.comというサイトでの各種ブランド(洋服、靴、美容品、家電、ジュエリー等)の販売で、ブランド品をセール価格で販売していることが特徴です。従って、ターゲット顧客はやはり富裕層(純富裕層?)になります。登録会員数は4億件超(顧客数2億人強)、ブランドパートナーは2万を超えるので、顧客数も取扱の幅もとんでもない数字です。

事業内容は完全にeコマース、しかもブランド品販売に注力しており、その内容は単純明快、投資家にとって事業多角化のリスクが非常に小さくて良い銘柄だと言えます。

 

eコマースの市場規模(社会需要)


(出典:INSIDER)

上記は中国のeコマースの市場規模です。

2019年、2020年は27%成長しました。今までのeコマースの成長は、デジタル化、オフラインと比較してオンラインショッピングが増えてきたからだということです。

2021年以降の成長率は平均約11%の予想となっています。

中国のGDP成長率は直近で7%前後です(参照:世界経済のネタ帳)。インフレ率も考慮すれば、上記の成長率予想はやや高い数字ではあるものの、全く不可能な数字ではありません。

中国は既にオンラインショップの比率がかなり高くなっています。この事実をそのまま受け止めれば、中国のeコマース市場に成長余地は無いということです。しかし、上記のオンライン比率は、地方の方のオンラインショップの利用や、そもそも買い物があまり出来ない低所得者は考慮されていないように見受けられます。月並みな言い方をすれば、アメリカ等の先進国と異なり、中国は成長のポテンシャルがある為、eコマース市場の今後の成長も期待できそうです。

 

eコマースの業界構造(競争要因、参入障壁)

ビップショップが置かれる、eコマース業界について5フォース分析をしてみましょう。


(出典:statista

先ず直接の競合は、他のeコマースを提供している企業でしょう。上記は中国でeコマースを提供している企業のランキングです。タオバオ(アリババグループ)が1位、Tモールが2位、ビップショップは5位でした。ランキング外かと思いましたが、意外にも良い位置にいますね。

アマゾンの記事で紹介した通り、中国ec企業は世界ランキングにもその名を連ねます。中国国内の需要は非常に大きいので、シェアを狙う企業は上記6社以外にも複数あり(参照:statista)、やはり参加しているプレイヤーは多く、競争が激しい業界です。

次は顧客との力関係です。ビップショップの顧客は実際に商品を買ってくれるエンドユーザーです。上記の通り、タオバオを初めとして、中国でもブランド品を取り扱うecサイトは複数あります。ビップショップの商品が高かったり、サービスが気に入らなければ、他のecサイトを選ぶことが出来ます。従って、ビップショップの顧客に対する交渉力はそこまで強くないと言えます。

仕入先との力関係はどうでしょうか。ビップショップの仕入先は各ブランドです。ビップショップは無数のブランドから仕入れています。超売れ筋ブランドなら別ですが、1~2社がビップショップの取り扱いから消えても、ビップショップにとって痛くも痒くもないでしょう。従って、仕入先に対するビップショップの交渉力は絶大だといえます。

代替サービスの脅威について、先ずオフラインの店舗があります。最近流行りのDtoC、メーカーやブランドが自社のHPで販売を行うのも代替案です。影響力や集客力が凄い個人、非常に魅力的な商品を取り扱っている人は、個人でネットショップをやる方法もあります。通販だけがモノを買う方法では無いので、代替サービスの脅威は強そうですね。

新規参入者について、eコマースで有名どころの企業は何れも創業が1990~2015年です(参照:MARKINBLOG)。ここ数年ではニューカマーの数はそこまで増えてない、新規参入の多さは中程度でしょう。eコマースを始めるにあたっては、販売等の各システムやカスタマーサポート、販売業者のサポート、ロジスティック拠点、配達網を築く必要があり、気楽にチャレンジできる業界ではありません。参入障壁は中と言ったところでしょうか。

 

ビップショップのサービスの強み(商品力)

ビップショップの強みは、ブランド品を安く提供する、価格競争力と販売戦略にあります。

ecサイトを見て頂ければ分かりますが、80%オフ等、とんでもない割引を実施しています。ちゃんとしたブランド品を安く買いたい人にはたまらないですね。

脅威の割引率の秘訣は、特にオフシーズン品や在庫回転率が悪い商品を大量仕入れることです。アウトレット品に近いですね。

ビップショップは「フラッシュ販売モデル」という販売方法を行っています。これは毎日行っている時間限定、数量限定のセールで、スリリングかつエキサイティングなショッピングを楽しめるものです。

ビップショップはいわば「オンライン上のアウトレット」と言えましょう。しかも、売っているのは訳ありのキズものでは無く普通の商品です。おまけに毎日バーゲンを行っているので、ブランド品が欲しいけどお金が無い人(私ですww)にとっては救世主的存在です。総合ecサイトにはできない、ブランド品のセール販売こそ、ビップショップ最大の強みです。

 

ビップショップの利幅は大きいか?(収益性)

ビップショップの収益性をチェックしていきましょう。


(出典:macrotrends

先ずは資本金に対してどれくらい効率的に収益を上げているかを示す、ROE(自己資本利益率)という指標を見ますが、上記の通り(オレンジ点線がビップス)ROEは安定して20~40%を行ったり来たりしていて、やや安定性に欠けます。

競合と比較すると、天下のアマゾンに迫るくらいの高さで、ビップショップのROEはかなり高いレベルにあることが分かります。


(出典:macrotrends

次に、ROEと似ていますが、お金を効率的に儲けていることを正確に表す指数、ROA(総資産利益率)を見ると、上記の通り(オレンジ点線がビップス)10%前後をキープしています。

競合と比較すると、なんと巨人アマゾンを凌駕しています。ビップスの儲ける力はアマゾンよりも高いということです、凄いですね。


(出典:macrotrends

最後に、収益性がどれくらい高いのかが分かる指標、売上高営業利益率を見ます。上記の通り(オレンジ点線がビップス)、営業利益率は5%前後です。

競合と比較すると、アリババには及びませんが、アマゾンに迫るくらいの収益性があります。

尚、eコマース等のオンラインショップの売上高営業利益率は約6%です(参照:csi market)。なのでビップショップの収益性は業界内では平均、平均より僅かに下くらいの水準です。

因みに、全体平均と収益性を比較してみると、S&P 500の売上高営業利益率は16.24%です(参照:csi market)。eコマースは自身で製品を製造しない小売りなので、利益率は他の業界より劣るようです。

上記を纏めると、ビップショップの収益性は平均レベルだと言えます。

 

ビップショップは効率良くお金を回しているか?(効率性)

ビップショップがお金を効率良く回して儲かっているかを調べてみましょう。

効率性は総資産回転率という指標で見ます。財務諸表より、2020年の総資産回転率は1.72、2019年は1.91でした。

上記より、効率性が悪化していると分かります。売上も伸びていますが、それを上回るペースで資産が増加してしまったということです。

利益が小さい分、より少ない資産でより多くの商売(商品の売買)を回すのが小売り、eコマースの基本であり宿命です。回転率が悪くなるのはあまり頂けません。今後の改善に期待したいところです。

業界平均と比較すると、業界平均の総資産回転率は1.4前後でした(参照:csi market)。ビップショップの回転率が以前より落ちているとは言え、依然として業界平均をかなり上回る効率性をビップショップは有していると言えます。

上記を纏めると、ビップショップの効率性は非常に高いです。

 

ビップショップは今後大きくなるか?(成長性)

ではビップショップの成長性を評価していきましょう。


(出典:Yahoo!FInance

上記はビップショップの予想売上高成長率です。今年は2.7%(上記の表は間違い)、来年は11%と成長スピードが上がる予想です。

2021年の売上実績ですが、2021年11月20日時点で上記の予想には届かない見通しで、成長率は低くなりそうです。2021年は中国の経済成長にブレーキが掛かっており、ビップショップに限らず、他のeコマース企業の売上や利益の伸びは限定されたようです。

2022年の成長予想ですが、中国のeコマース市場の成長率と比較すると、ビップショップの成長率は控えめです。中国の経済成長鈍化を受けて、上記のように控えめな数字になったのかもしれません。

競合と比較すると、アマゾンの2022年成長率予想が17.70%(参照:Yahoo!finance)、アリババが18.70%(参照:Yahoo!finance)、チューイが20.30%(参照:yahoo!finance)、オーバーストックが11.90%(参照:yahoo!finance)です。

競合と比較すれば、ビップショップの成長率がやや見劣りします。しかし、中国の経済成長鈍化を考慮すれば、アリババの成長率はあまりにも強気な数字です。現実的に考えれば、ビップショップの成長率は平均並みと言えそうです。

 

ビップショップは倒産しないか?(安全性)

ビップショップの安全性をチェックします。


(出典:macrotrends

短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率は上記の通り(3つのグラフの一番下)です。ビップショップの流動比率は現時点では基準となる1.00を僅かに下回っており、もう少し多くの流動資産が欲しいところです。

借金が占める割合を示す自己資本比率は、2020年は49%、2019年は45%でした。理想の50%に近く、非常に健康的な数字です。

キャッシュフローは、営業キャッシュフローが大きなプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローが小さなマイナスで、盤石の内容です。フリーキャッシュフローが年々改善して大きくなっているので、良い傾向だと言えます。

上記を纏めると、ビップショップの安全性は高いと言えます。

 

ビップショップは割安か?(割安度)

ビップショップが割安かどうかを判断する為に、PER(株価収益率)という割安度を示す指標を中心に各種分析をしてみましょう。

 

ビップショップの株価(パフォーマンス)

既述の通り、ビップショップの収益性も成長性も平均並だったので、株価もまあまあな筈です。実際にはどうでしょうか?


(出典:yahoo!finance

上記は5年間の株価チャートです。アマゾン(AMZN)とオーバーストック(OTSK)がぶっちぎり、大分差をつけられてアリババ(BABA)、チューイ(CHWY)、最後にビップショップ(青色線)という順です。予想通り、ビップショップは実力相応の株価チャートでした。

因みにS&P 500(緑色)に対して、ビップショップのパフォーマンスは下回っています。株式市場全体平均よりもビップショップの方が将来性が無いと投資家が判断しているということです。本当にそうなら、ビップショップには投資価値が無いということになります。

 

ビップショップの実力評価(PERと収益性、成長性)

次に割安度を示すPER(株価収益率)という指標が、その銘柄の実力に反して低いのかどうかを見ます。


(参照:yahoo!finance

上記はPERと利益率(収益性)、成長率をプロットしたものです。

グラフの右に行くほど実力が高く、上にいくほど株式市場からの評価が高いことを意味します。青線より左上は割高、右下は割安ということです。

収益性はアリババ(BABA)がぶっちぎり、成長性はチューイ(CNWY)が高いです。ビップショップ(VIPS)は収益性も成長性もまずまずですが、PERが異様に低く、株式市場からの評価が異常に低いことが分かります。

 

ビップショップの株価(割安度)の推移


(出典:macrotrends

上記はビップショップのPER(一番下のグラフ)です。

以前は非常に高かったのですが、収益が上がってきて、一方で株価はあまり上がらなかったのでPERが非常に低くなっています。ビップショップの株価は今割安な水準です。

 

ビップショップの理論株価

最後にビップショップの理論株価を超ざっくり計算してみましょう。

先に結論を述べると、理論株価は122.15ドル、2021年11月20日の株価は10.04ドルと理論株価の10分の1以下で、今の株価は割安だと言えます。

さて、理論株価の計算方法ですが、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を用います。本来は過去の財務諸表から、将来の財務諸表を厳密に計算しますが、

・今後10年分のフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを除いたもの)は、過去5年分のフリーキャッシュフロー(参照:reuters)から予想値をざっくり設定
・リスクフリーレート(リスク0の投資先の利回り)は中国10年国債(参照:marketwatch
・ベータ(個別の株式のリスク)は株式市場で一般に公開されているデータ(参照:yahoo!finance
・マーケットリスクプライム(投資家が株式に期待するリターン)は上海総合指数の過去10年のリターン(参照:TRADING ECONOMICS
・有利子負債資本コスト(企業が借りている借金の金利)やD/Eレシオ(負債と資本金の比率)は最新の決算書を参照
・永久成長率は中国の物価上昇率を参照(参照:TRADING ECONOMICS
・必要手許現預金は月商1か月分
・保有している固定資産(設備等)の20%は余剰投資資産と想定

という前提で計算しました。計算結果は下記の通りです。

 

結局ビップショップの株価は割安なのか?

上記の分析結果を見ると、ビップショップの収益性や成長性はまずまずだが、株価はその実力よりはずっと低い水準になっています。

基本的には市場が正しいと仮定して、何故ここまで理論株価と乖離があるのかを考察してみます。

先ず大前提として、中国への投資が敬遠されている可能性は非常に高いです。

中国の株式市場では悪いニュースが絶えません。恒大集団の債務危機、教育の規制による塾の非営利化、アリババ等のハイテク企業への独禁法による規制強化等、企業がどんどん不利に立たされる状況になっており、次もまた中国政府により新たな規制が出てこないか、投資家が警戒している可能性があります。

あとは中国経済の失速です。上記が影響しているのか分かりませんが、GDP(国内総生産)成長率が低くなっており、中国経済の成長ペースが落ちているようです。

ミクロ的な視点、ビップショップの株価と直近の決算発表を見ると、2021年に入って収益性が悪化したり、売上(や利益)の伸びが鈍化したことに投資家が失望したんでしょう。2021年12月27日には売上予想を下方修正しており、株価の下落が更に加速しています。

上記を考慮して、今後ビップショップの株価が上がる、理論株価との乖離が解消される条件は①中国の規制緩和、②今後の経済成長展望の改善(に伴う中国への投資回復)、③ビップショップの業績向上、これら3つがポイントになりそうです。

①が最も重要なポイントでしょう。つい最近のニュースによると、中国は景気拡大支援へと政策のかじを切ったということです(参照:Bloomberg)。

②は①を受けての結果と言えますが、投資家は中国の行く末に懐疑的で、すぐに中国への投資再開とはならないと思います。政策が転換されてから、少なくとも半年程度(2022年6月)は時間が掛かりそうです。

③は2021年4Qが転換点になりそうです。ブラックフライデーやクリスマス等のイベントづくしなので、ビップショップに限らず、eコマースにとって4Qは最大の勝負所です。ビップショップがここでアナリスト予想を下回ったりすると大怪我間違い無しで、1年くらいは株価が低迷する可能性があります。

上記考察より、2021年4Q次第ではあるものの、中国の経済成長の展望が改善されるタイミング、2022年3~6月頃にはビップショップの株価が上昇トレンドに転換し、株価が約50~100%上昇すると予想します。

 

ビップショップの総評

しーおががの銘柄評価基準に照らし合わせた、ビップショップの総合評価は82点です。

競争が激しい中国のeコマースにおいて、ブランド品のセール販売という明確な差別化で確りシェアを獲得できているところを高く評価しました。直近の業績は良い内容とは言い難いですが、依然としてビップショップのファンダメンタルズは変わっておらず、長期での株価上昇が期待できます。財務体質も良いので安心して投資できます。

ビップショップに投資すべきかどうか、「買い」が私個人の投資判断です。

以上、ビップショップの決算書解説でした。

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